1歳10か月の男児。咳と喘鳴とを主訴に母親に連れられて来院した。昨日歩きながらピーナッツの入った菓子を食べていた時に、急にむせ込んで咳をし始めた。 本日も咳が持続し喘鳴が出現したため受診した。体温 36.7 ℃。脈拍 108/分、整。 呼吸数 30/分。SpO2 98 %(room air)。吸気時と呼気時の胸部エックス線写真を示す。 この患児にまず行う処置として正しいのはどれか。
a 酸素投与
b 開胸手術
c 抗菌薬静脈内投与
d Heimlich 法の施行
e 気管支内視鏡による摘出
1歳10か月の男児のピーナッツの誤飲の症例です。
胸部レントゲンでは、呼気時に縦隔が右へ偏位しています。これは左肺が呼気障害を起こし、過膨張を起こしている状態です。
左気管支異物が疑われます。
治療は、気管支内視鏡による摘出となります。
従って正解はeとなります。
正解 e
異物誤飲のレントゲン画像
異物を誤飲した場合X線不透過性の異物であれば診断は容易ですが、X線透過性であれば間接所見を利用します。
- 気管支の完全閉塞→無気肺を認めます。
- 気管支の不完全閉塞→呼気時に末梢肺の過膨張を認めることがあります。(これをHolzknecht徴候(ホルツクネヒト徴候))と言います。)これは異物がチェックバルブとなっていることによる呼吸不全とされています。健側に縦隔が移動します。
このように通常異物が疑われた場合、呼気と吸気での2枚の胸部X線を撮影します。
ちなみに、もし胸部X線で吸気呼気撮影して診断がつかない場合は、CTやMRIの撮影を考慮します。
ちなみにピーナッツは脂肪成分に富むため、T1強調像で高信号を示します。