来院時レントゲンで右側に胸水貯留があることとわかります。
したがって、胸腔穿刺を行ったのは右側であり、胸腔穿刺後Ⅰ時間後のレントゲンでは胸水の減弱を認めています。
ただし、中下肺野にすりガラス影ー浸潤影を認めています。
胸部CTでは右の上下葉にcrazy paving appearance様のすりガラス影を認めており、胸膜末梢は保たれているように見えます。
胸腔穿刺後にこのような陰影が出現していることから、
再膨張性肺⽔腫(reexpansion pulmonary edema)
が疑われます。
再膨張性肺⽔腫とは?
長期にわたって虚脱していた肺が急激に再膨張することにより、肺血流の急速な増加とフリーラジカルを介した再灌流障害により、肺毛細血管の透過性が亢進し、その結果肺水腫に陥るものです。
胸腔ドレナージ(穿刺)直後から数時間後に発症する呼吸困難、低酸素血症として生じます。
基本は同側に起こりますが対側に広がることもあります。
ですので、排液は緩徐に行う必要があります。
具体的には最初は30-1時間かけて500ml-1l程度引いて、その後も緩徐に除水をし、1/5L/日が限度とされてます1)。
今回のように胸水の穿刺だけではなく、気胸に対する胸腔ドレナージでも認められることがあります。
治療は、ステロイドの投与、PEEP(positive end-expiratory pressure:呼気終末気道内陽圧)を用いた人工呼吸管理を行う2)。
CPPVは設定するパラメーターが沢山あり、NPPVよりも呼吸管理に優れます。
今回全身状態が悪く、正解はbのCPPVとなります。
参考:片側の肺水腫を来す疾患・病態3)
- 大動脈と片側肺動脈の吻合術後
- 片側性肺静脈閉塞
- 長期間の側臥位
- 再膨張性肺水腫
- 肺挫傷
- 先天性片側性肺動脈欠損
- 片側性肺血栓塞栓症
- Swyer-James症候群
- 片側性胸部交感神経切断術後
など
参考文献
1)月刊レジデント2011年1月 P141
2)経過でみる救急・ICU画像診断マニュアル P157
3)画像診断ヒヤリ・ハット 記憶に残る画像たち P69