53 歳の男性。3か月前から持続する上腹部痛を主訴に来院した。25 歳ごろから アルコールを多飲している。上腹部に圧痛を認める。血液生化学所見:総ビリルビ ン 1.0 mg/dL、AST 84 U/L、ALT 53 U/L、ALP 258 U/L (基準 115〜359)、 γ-GTP 110 U/L (基準〜50)、アミラーゼ 215 U/L( 基準 37〜160)、空腹時血糖 278 mg/dL、HbA1c 9.6 %基準 4.6〜6.2、CA19-9 32 U/mL 基準 37 以下。腹部CTと MRCPとを別に示す。 この患者への指導として適切なのはどれか。2つ選べ。
a 禁 酒
b 水分制限
c 脂肪制限食
d 蛋白制限食
e 高エネルギー食
- 上腹部痛
- アルコール多飲
- 肝酵素上昇・γGTP上昇
- 空腹時血糖 ・HbA1c 著明上昇 あり。
腹部単純CTでは、主膵管の中に高吸収な膵石を疑う所見、石灰化を疑う所見を多数認めており、主膵管は拡張、蛇行している様子がわかります。
また膵は全体的に萎縮しています。
MRCPでは、胆管や膵管の様子がよくわかります。
主膵管は著明に拡張して、蛇行している様子が今回はわかります。
これらから慢性膵炎と診断することができます。
慢性膵炎の治療1)としては、
- 生活指導:禁酒、禁煙、低脂肪食(30-35g/日以下)
- 薬物療法:NSAIDs、抗コリン薬、鎮痙薬、タンパク分解酵素阻害薬、消化酵素薬など
が行われます。
従って正解は、a,cとなります。
慢性膵炎の画像診断
慢性膵炎の画像所見で大事なことは、
- 主膵管内の結石
- 膵臓全体にびまん性の石灰化。
を見つけることで、これらがあれば慢性膵炎の確定診断2)となります。
なお、
- CTにおいて主膵管の不規則なびまん性の拡張とともに不規則な凹凸を示す膵臓の明らかな変形
を認める場合は、慢性膵炎の準確定診断所見となります。
- 膵石や膵の石灰化の有無→単純CT
- 主膵管の拡張、蛇行所見→エコー,MRCP,CT
がそれぞれ得意なところですのでこれらで評価します。
参考文献:
- 1)病気がみえる 〈vol.1〉 消化器 P411
- 2)慢性膵炎臨床診断基準 2009