問題:第120回医師国家試験A35
54歳の男性。口腔内の違和感を主訴に来院した。2年前から口唇の肥厚と下顎の突出を自覚し、その後、靴のサイズが約1cm大きくなり、指輪が外れなくなった。既往歴に高血圧症があり内服治療中である。また、睡眠時無呼吸症候群で通院中である。矯正視力は右1.5、左0.2。顔面は眉弓突出、口唇肥大および下顎突出を認め、口腔内は舌の腫大を認める。空腹時血糖111mg/dL、HbA1c 6.3%(基準4.9〜6.0)。頭部造影MRIのT1強調矢状断像(別冊No.12A)と頭部単純MRIのT2強調冠状断像(別冊No.12B)とを別に示す。
この患者の内分泌検査所見で異常高値を認めるのはどれか。
a ACTH
b FT3
c インスリン様成長因子-I〈IGF-I〉
d LH
e TSH
問題文は厚生労働省の原文から、画像と診断の検討に必要な部分を抜粋・整形しています。


画像出典:厚生労働省「第120回医師国家試験問題および正答」A35・別冊No.12A、B。画像本体に注釈は追加していません。
正答を確認する
正答:c インスリン様成長因子-I〈IGF-I〉
厚生労働省の公式正答値表はA035:Cです。
顔貌と手足の変化から、先端巨大症を考える
この症例で注目するのは、下顎・眉弓の突出、厚くなった口唇、大きな舌に加え、手足のサイズも増していることです。成人でゆっくり進むこの組み合わせは、先端巨大症を疑う手がかりになります。高血圧や睡眠時無呼吸も、この病態に関連する合併症です。
原因として多いのは、成長ホルモン(GH)を過剰に分泌する下垂体腫瘍です。骨端線が閉鎖した成人では、身長が大きく伸びるというより、末端や顔貌・軟部組織に変化が現れます。
MRIは「場所と広がり」を読む
Aの矢状断では、鼻の奥、蝶形骨洞の上にあるトルコ鞍部に腫瘤が見えます。Bの冠状断では、腫瘤が鞍内から上方にも広がり、内部のT2信号が一様ではないことを確認できます。身体所見と合わせて、GH産生下垂体腫瘍を考えます。
下垂体病変の読影では、正常下垂体の位置、視交叉との関係、左右の海綿静脈洞・内頸動脈との関係を順に確認します。今回の視力低下は視機能評価が必要な情報ですが、問題文に書かれていない両耳側半盲や、海綿静脈洞への浸潤まで断定しないようにしましょう。
また、MRIだけで「どのホルモンを分泌する腫瘍か」が確定するわけではありません。画像で病変の存在と広がりを調べ、症状と内分泌検査で機能を評価する、という役割分担が大切です。
正常例との位置関係は正常下垂体のMRI、腫瘍の評価項目は下垂体腺腫(PitNET)のMRI画像所見で復習できます。下垂体腺腫は、現在の分類では下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)とも呼ばれます。
なぜIGF-Iが高くなるのか
GHの作用で、肝臓などにおけるIGF-Iの産生が増えます。したがって、先端巨大症ではGH過剰を反映するIGF-Iの高値が診断の重要な手がかりです。IGF-IはIGF-1、ソマトメジンCとも表記されます。
IGF-Iは年齢・性別に応じた基準値で評価します。必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷によるGHの抑制を調べ、身体所見、内分泌検査、下垂体MRIを合わせて診断します。この設問で問われているのは、選択肢のうち高値を予想する指標です。
他の選択肢をどう考えるか
| 選択肢 | 考え方 |
|---|---|
| a ACTH | ACTH産生下垂体腫瘍ではCushing病を考えます。今回の顔貌と末端肥大に対応する指標はIGF-Iです。 |
| b FT3 | 甲状腺ホルモンです。手足の肥大や下顎突出をGH過剰で説明する本問では選びません。 |
| d LH | 性腺刺激ホルモンです。腫瘤があるだけで、すべての下垂体ホルモンが高くなるわけではありません。 |
| e TSH | TSH産生腫瘍とGH産生腫瘍を混同しないことがポイントです。 |
国試で押さえること
下垂体MRIは場所と広がり、内分泌検査はホルモンの機能を評価します。画像所見だけで機能性の種類を決めないようにしましょう。
正常解剖の復習に、画像診断cafe
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出典・参考文献
- 厚生労働省.第120回医師国家試験問題および正答.A35、別冊No.12、公式正答値表。
- 難病情報センター/間脳下垂体機能障害に関する調査研究班.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症、診断・治療指針。
- 問題別解説の照合:コクシメイク・120A35。正答と病態の説明を照合し、画像は厚生労働省の原画像を確認。








