急性心筋梗塞に伴う心原性ショックの血行動態|第118回医師国家試験F74

第118回医師国家試験 F74(2024年)

正答:b

問題

70歳の男性。激しい胸痛のため家族に伴われて救急車で搬入された。

現症:意識レベルはJCS Ⅱ‑10。心拍数104/分、整。血圧68 mmHg(触診法)。呼吸数26/分。SpO2は測定不能(リザーバ付マスク10 L/分酸素投与下)である。心音は奔馬調律である。呼吸音は全胸部にcoarse cracklesを聴取する。皮膚は湿潤し、四肢末梢の著明な冷感を認める。

検査所見:心電図(別冊No.10)を別に示す。

以下の追加情報が得られた。

現病歴:数日前から歩行中に圧迫感をともなう胸痛があった。安静で改善するため様子をみていたが、本日就寝後に激しい胸痛が出現し持続しているため家族が救急車を要請した。

既往歴:糖尿病、脂質異常症、高血圧症で内服加療中である。

生活歴:喫煙は30本/日であったが、60歳から禁煙している。飲酒は機会飲酒。

家族歴:兄が狭心症で冠動脈バイパス術を受けている。

検査所見:血液所見:赤血球442万、Hb 13.0 g/dL、Ht 41 %、白血球12,000、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白6.4 g/dL、アルブミン3.3 g/dL、尿素窒素28 mg/dL、クレアチニン1.5 mg/dL、血糖198 mg/dL、Na 137 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 97 mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉832 pg/mL (基準18.4以下)。心筋トロポニンT迅速検査陽性。引き続き心臓カテーテル検査が施行された。右冠動脈造影像(別冊No.11A)と左冠動脈造影像(別冊No.11B)を別に示す。

この患者の血行動態の変化で正しいのはどれか。

選択肢 心拍出量 肺動脈楔入圧 中心静脈圧 末梢血管抵抗
a 増加 低下 低下 上昇
b 減少 上昇 上昇 上昇
c 減少 上昇 上昇 低下
d 減少 低下 上昇 低下
e 減少 低下 低下 上昇
前胸部誘導のST上昇と広い範囲の虚血性ST変化。
別冊No.10:共通症例の心電図 / 出典:厚生労働省・第118回F別冊(原本の該当ページ)
右冠動脈の造影。
別冊No.11A:右冠動脈造影 / 出典:厚生労働省・第118回F別冊(原本の該当ページ)
左冠動脈近位での造影途絶。
別冊No.11B:左冠動脈造影 / 出典:厚生労働省・第118回F別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

持続する胸痛、心筋トロポニン陽性、虚血性心電図と冠動脈閉塞を認め、心原性ショックと判断する。心収縮力低下で心拍出量が減少し、左心系の充満圧上昇が肺動脈楔入圧上昇・肺うっ血として現れる。中心静脈圧も上昇し、代償性の末梢血管収縮で末梢血管抵抗が上がる組合せbを選ぶ。

画像の見方

V₂〜V₃を中心とする前胸部誘導のST上昇と、ほかの誘導の虚血性ST変化がみられる。胸痛とショックを伴うため、広い心筋虚血を来す急性冠症候群を疑う。 左冠動脈造影では近位で造影が途絶し、末梢の前下行枝・回旋枝が通常どおり描出されていない。広範な左心機能低下を来す冠動脈病変として、肺うっ血を伴う心原性ショックに合う。

各選択肢の検討

a:心原性ショックで心拍出量が増加する組合せではない。

b:正しい。心拍出量低下、肺動脈楔入圧・中心静脈圧・末梢血管抵抗上昇に合う。

c:本例では代償性血管収縮が生じ、末梢血管抵抗は上昇する。

d:著しい左心不全・肺うっ血があり、肺動脈楔入圧低下とは合わない。

e:低拍出と血管収縮は合うが、充満圧低下は主に循環血液量減少性ショックでみる。

覚えるポイント

血圧低下だけでショックを分類せず、うっ血、心拍出量、血管抵抗を合わせる。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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