第118回医師国家試験 F68(2024年)
正答:d
問題
80歳の男性。発熱と排尿困難を主訴に来院した。
現病歴:3日前から排尿困難を自覚していた。本日から悪寒戦慄を伴う発熱が出現したため救急外来を受診した。
既往歴:高血圧症、糖尿病、脂質異常症、うつ病および蕁麻疹に対してアンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬、DPP‑4阻害薬、スタチン、三環系抗うつ薬およびヒスタミンH1受容体拮抗薬を内服している。
生活歴:65歳までは会社員で、現在は無職である。一人暮らし。喫煙は70歳まで10本/日を50年間、飲酒は機会飲酒。ネコを飼育している。
家族歴:父が脳梗塞、母が糖尿病。
現症:意識は清明。身長170 cm、体重72 kg。体温38.8 ℃。脈拍112/分、整。血圧136/60 mmHg。呼吸数26/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。下腹部が膨隆しているが、圧痛を認めない。肝・脾は触知しない。左の肋骨脊柱角に叩打痛を認める。直腸指診で4 cm大の前立腺を触知し、圧痛を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白1+、糖1+、潜血(−)、沈渣に赤血球1〜4/HPF、白血球100以上/HPFを認める。血液所見:赤血球461万、Hb 14.9 g/dL、Ht 44 %、白血球14,300(桿状核好中球2 %、分葉核好中球90 %、好酸球1 %、好塩基球1 %、単球3 %、リンパ球3 %)、血小板12万、PT‑INR 1.18(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.6 g/dL、アルブミン3.9 g/dL、総ビリルビン1.5 mg/dL、直接ビリルビン0.4 mg/dL、AST 13 U/L、ALT 15 U/L、LD 219 U/L(基準124〜222)、ALP 79 U/L(基準38〜113)、γ‑GT 30 U/L(基準13〜64)、CK 76 U/L(基準59〜248)、尿素窒素26 mg/dL、クレアチニン1.3 mg/dL、尿酸4.7 mg/dL、血糖120 mg/dL、HbA1c 7.0 %(基準4.9〜6.0)、総コレステロール197 mg/dL、トリグリセリド226 mg/dL、HDLコレステロール69 mg/dL、LDLコレステロール83 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.5 mEq/L、Cl 105 mEq/L。CRP 14 mg/dL。胸部エックス線写真で心胸郭比51 %、両側肺野に浸潤影を認めない。腹部超音波検査で膀胱内に大量の尿が貯留している所見を認めるが水腎症は認めない。
尿道カテーテルを留置し、血液培養2セットと尿培養を採取したのちに入院した。入院後からセフトリアキソンの投与を開始した。入院翌日に血液培養は2セットとも陽性になり、Escherichia coliと同定された。薬剤感受性試験の結果を表1に示す。尿培養からの検出菌および薬剤感受性試験の結果は血液培養と同じであった。現時点での血清クレアチニンは1.0 mg/dLであり、体重は入院時から変化していない。セフトリアキソンの投与を中止し抗菌薬を変更することになった。
Cockcroft‐Gaultの計算式と表2に腎機能に応じた抗菌薬推奨投与方法を示す。
S:susceptible(感性) R:resistant(耐性)
Cockcroft‐Gaultの計算式:男性:クレアチニンクリアランス={(140−年齢)×体重(kg)}/{72×血清クレアチニン値(mg/dL)}
CrCl:クレアチニンクリアランス
表1.薬剤感受性試験結果
| 抗菌薬 | 感受性試験結果 |
|---|---|
| アンピシリン | R |
| セファゾリン | S |
| メロペネム | S |
表2.腎機能に応じた抗菌薬推奨投与方法(当該医療機関で定めたもの)
| CrCl | アンピシリン | セファゾリン | メロペネム |
|---|---|---|---|
| >50 mL/min | A:1回2 g、6時間毎 | D:1回2 g、8時間毎 | G:1回1 g、8時間毎 |
| 10〜50 mL/min | B:1回2 g、8時間毎 | E:1回2 g、12時間毎 | H:1回1 g、12時間毎 |
| <10 mL/min | C:1回2 g、12時間毎 | F:1回1 g、24時間毎 | I:1回0.5 g、24時間毎 |
表2のうち、セフトリアキソンからの抗菌薬変更に際し、最も適切な投与方法はどれか。
a.A
b.B
c.C
d.D
e.E
f.F
g.G
h.H
i.I
正答の理由
血液・尿から同じEscherichia coliが検出され、セファゾリンに感性である。アンピシリンは耐性のため選ばず、さらに広域のメロペネムへ変更する必要もない。男性のCockcroft–Gault式に80歳、72 kg、血清Cr1.0 mg/dLを代入するとCrCl=(140−80)×72÷(72×1.0)=60 mL/minとなる。提示された院内表のCrCl>50 mL/minのセファゾリン、D(1回2 g、8時間毎)を選ぶ。
各選択肢の検討
a:Aはアンピシリンであり、耐性菌には選ばない。
b:Bもアンピシリンで、感受性と腎機能区分の双方が合わない。
c:Cもアンピシリンであり適切でない。
d:正しい。DはCrCl>50 mL/minのセファゾリン2 g、8時間毎である。
e:EはCrCl10〜50 mL/minの投与法で、今回の計算値60には合わない。
f:FはCrCl<10 mL/minの投与法であり、今回は該当しない。
g:Gはメロペネムであり、感性が確認されたセファゾリンに狭域化できる本例では優先しない。
h:Hはメロペネムで、腎機能区分も異なる。
i:Iはメロペネムで、腎機能区分も異なる。
覚えるポイント
感受性、感染部位、腎機能を確認して適切な狭域薬へ変更する。この投与表は設問の院内規定であり、すべての施設・患者への一律の処方指示ではない。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。