第117回医師国家試験 F66(2023年)
正答:c
問題
56歳の男性。右季肋部痛を主訴に来院した。
現病歴:以前から右背部痛を自覚していたが、1か月前から痛みの頻度が増加し、就寝初期の右季肋部痛も伴うようになったため自宅近くの医院を受診した。腹部超音波検査で胆囊結石を認め、手術目的に紹介受診した。
既往歴:1年前から高血圧症と 2 型糖尿病で降圧薬と経口糖尿病薬を内服している。
生活歴:喫煙は 20本/日を 35年間。飲酒は焼酎 1 合/日を 10年間。
家族歴:母が 2 型糖尿病で治療中である。
現症:意識は清明。身長 171 cm、体重 70 kg。体温 36.1 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 148/96 mmHg。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、右季肋部に圧痛を認める。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球 580万、Hb 15.9 g/dL、Ht 51 %、白血球 8,400(好中球 70 %、好酸球 1 %、好塩基球 1 %、単球 4 %、リンパ球 24 %)、血小板 27万、PT‑INR 0.95(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 7.6 g/dL、アルブミン 5.0 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 13 U/L、ALT 18 U/L、LD 120 U/L(基準 120〜245)、ALP 55 U/L (基準 38〜113)、γ‑GT 16 U/L(基準 8〜50)、CK 50 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 10 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸 6.5 mg/dL、血糖95 mg/dL、HbA1c 6.8 %(基準 4.6〜6.2)、トリグリセリド 207 mg/dL、HDL コレステロール 242 mg/dL、LDL コレステロール 162 mg/dL、Na 142 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 102 mEq/L、Ca 9.3 mg/dL。CRP 0.1 mg/dL。心電図で異常を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比 46 %。上部消化管内視鏡検査で異常所見を認めない。腹部超音波検査、腹部単純 CT 及び磁気共鳴胆管膵管撮影〈MRCP〉で胆囊内に径 5〜8 mm の結石を数個認めたが、他の異常所見を認めない。胆囊結石症と診断し、待期的に腹腔鏡下胆囊摘出術を予定することとした。
周術期管理について誤っているのはどれか。
a.前日、夕食を摂取する。
b.当日術前、降圧薬を内服する。
c.当日術前、経口糖尿病薬を内服する。
d.翌日、食事を開始する。
e.翌日、経口鎮痛薬を内服する。
正答の理由
手術当日は絶食や侵襲によって血糖と薬剤の安全性が変わるため、経口糖尿病薬を普段どおり内服するのは不適切です。薬剤ごとの休薬時期を決め、必要に応じてインスリン等で血糖を管理します。降圧薬も一律継続ではなく、薬剤の種類と麻酔計画に合わせます。
各選択肢の検討
a.翌朝の予定手術では通常、前日の夕食は可能です。施設の絶食指示に従います。
b.一般に継続する降圧薬はありますが、ACE阻害薬・ARB等は術中低血圧の懸念から休薬する場合があります。具体的な薬剤を確認します。
c.正答。絶食下の低血糖や薬剤特有の有害事象を避けるため調整します。SGLT2阻害薬は予定手術の3日前から休薬するなど、当日だけの中止では不十分な薬もあります。
d.合併症がなく経過が良好であれば、翌日の食事再開は可能です。
e.食事・内服が可能であれば、翌日に経口鎮痛薬を使用できます。
覚えるポイント
周術期の薬は「全部飲む・全部止める」ではなく、薬剤と患者の状態ごとに計画する。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。