くも膜下出血と蘇生後管理で不要なペーシングを区別|第117回医師国家試験F60

第117回医師国家試験 F60(2023年)

正答:d

問題

56歳の女性。強い頭痛後に、意識障害を生じたため救急車で搬入された。

現病歴:自宅で家事をしていたところ、突然強い頭痛を訴えた。その後まもなく反応が無くなったため、長女が救急車を要請した。2 日前に頭痛で自宅近くの診療所を受診した際の検査結果を長女が持参している。

既往歴:12歳時に急性虫垂炎で手術。2 日前に頭痛があり、自宅近くの診療所で処方された鎮痛薬を内服している。

生活歴:夫、長女および長男との 4 人暮らし。30年前に会社を退職した。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。

家族歴:特記すべきことはない。

現症:意識レベルは JCSⅢ‑100。身長 152 cm、体重 56 kg。体温 37.2 ℃。心拍数 56/分、整。血圧 192/102 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 96 %(マスク 5 L/分酸素投与下)。瞳孔径は両側 3.0 mm。対光反射は両側で遅延している。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頭部に外傷はない。口腔内と咽頭とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。浮腫を認めない。腱反射に異常を認めない。

検査所見(持参したもの):尿所見:蛋白(−)、糖(−)。血液所見:赤血球 453万、Hb 13.0 g/dL、Ht 39 %、白血球 9,600(分葉核好中球 52 %、好酸球 5 %、好塩基球 1 %、単球 5 %、リンパ球 36 %)、血小板 26万。血液生化学所見:総蛋白6.8 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン0.3 mg/dL、AST 30 U/L、ALT 26 U/L、LD 130 U/L(基準 120〜245)、尿素窒素15 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、血糖 88 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.1 mEq/L、Cl 100 mEq/L。

まもなく、刺激に対する反応がなくなり、自発呼吸が停止した。頸動脈は触知できなかった。モニター心電図(別冊No. 7)を別に示す。

その後、直ちに胸骨圧迫およびバッグバルブマスク換気を開始し、静脈路確保を行った。アドレナリンを静脈投与した後に、自己心拍が再開し、心拍数 90/分、整。血圧 126/72 mmHg となった。自発呼吸は認めなかったため気管挿管を行い集中治療室へ入院となった。意識レベルは JCSIII‐300 から JCSIII‐100 となった。SpO2 は 98 %(吸入酸素濃度 60 %)であった。自発呼吸は回復しなかった。入院後に撮影した頭部単純 CT(別冊No. 8)を別に示す。

行うべき治療で誤っているのはどれか。

a.血圧管理

b.人工呼吸

c.体温管理療法

d.緊急ペーシング

e.高浸透圧利尿薬投与

組織だったQRS波が認められるモニター波形。
別冊No.7:モニター心電図 / 出典:厚生労働省・第117回F別冊(原本の該当ページ)
脳底槽と両側Sylvius裂にくも膜下出血。
別冊No.8:頭部単純CT / 出典:厚生労働省・第117回F別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

頭部CTは脳底槽や両側Sylvius裂などに高吸収域を認め、くも膜下出血を示します。自発呼吸がなく人工呼吸管理が必要ですが、自己心拍再開後は心拍数90/分、血圧126/72 mmHgで、緊急ペーシングの適応となる徐脈は示されていません。脳損傷と全身状態に応じた血圧、体温、頭蓋内圧の管理を行います。

画像の見方

脳底槽と両側Sylvius裂、前方の大脳半球間裂に沿った高吸収域を認めます。突然の強い頭痛と合わせ、くも膜下出血と判断します。

各選択肢の検討

a.再出血リスクと脳灌流を考慮し、過度の高血圧と低血圧の双方を避けます。

b.自発呼吸が回復しておらず必要です。酸素化と換気を適切に管理します。

c.昏睡が続く蘇生後患者では体温を管理し、発熱を防ぎます。くも膜下出血に対し一律に深い低体温へ下げるという意味ではありません。

d.正答。現在の心拍数と血圧から、徐脈に対する緊急ペーシングを行う根拠はありません。

e.頭蓋内圧亢進への対処として検討します。循環血液量、腎機能、電解質等を監視し、漫然と投与しません。

覚えるポイント

蘇生前の徐脈ではなく、自己心拍再開後の現在の循環状態から処置の適応を判断する。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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