第117回医師国家試験 D70(2023年)
正答:d
問題
58歳の女性(2妊2産)。下腹部膨満感を主訴に来院した。3か月間に急激な腹囲増大と食欲低下を自覚した。44歳時に左乳癌の治療歴がある。51歳で閉経。母方のおばが卵巣癌のため死亡。身長154 cm、体重44 kg。体温36.8 °C。脈拍76/分、整。血圧128/74 mmHg。呼吸数24/分。腹部は膨隆し、上腹部に及ぶ弾性硬の腫瘤を触知した。内診で、両側付属器と子宮が一塊となり可動性不良な骨盤内腫瘤を触知し、Douglas窩と膀胱子宮窩にも各々腫瘤を触知した。直腸指診で平滑な直腸粘膜を触知した。
血液所見:赤血球370万、Hb 10.8 g/dL、Ht 32 %、白血球8,800、血小板19万。
血液生化学所見:総蛋白6.8 g/dL、アルブミン3.3 g/dL、総ビリルビン0.9 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 40 U/L、尿素窒素20 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、CEA 2.8 ng/mL(基準5以下)、CA19‐9 30 U/mL(基準37以下)、CA125 1,280 U/mL(基準35以下)。CRP 1.0 mg/dL。
骨盤部MRI T2強調水平断像(別冊No.29A)、矢状断像(別冊No.29B)及び腹部造影CT(別冊No.29C)を別に示す。審査腹腔鏡(腹腔鏡下試験切除術)で、腫瘍の播種病変との癒着により骨盤内臓器の同定はできず、腫瘍生検のみ施行した。病理診断の結果は高異型度漿液性癌であった。
次に行う治療として適切なのはどれか。
a.免疫療法
b.開腹手術
c.放射線療法
d.薬物による抗癌治療
e.内分泌(ホルモン)薬による治療



正答の理由
高異型度漿液性癌が確定し、広範な播種と癒着により腹腔鏡で骨盤内臓器も同定困難な状況です。初回手術で完全切除する見込みが低いため、プラチナ製剤を含む化学療法を先行し、反応と切除可能性を再評価します。
画像の見方
MRIで骨盤内に大きな充実性成分を伴う腫瘤と液体成分を認めます。造影CTでは肝右葉領域に低吸収病変と肝表面付近の病変があり、腹腔内進展を疑います。単一断面だけで肝実質転移か表面病変かを断定しません。
各選択肢の検討
a.一般的な初回標準治療として免疫療法単独を選びません。
b.現時点で完全切除が困難なため、開腹手術を直ちに優先する選択ではありません。
c.広範な進行卵巣癌の初回標準治療は放射線単独ではありません。
d.正しい。術前化学療法を行い、状態・奏効・切除可能性を再評価して手術を検討します。
e.高異型度漿液性癌の初回治療としてホルモン療法単独は標準的ではありません。
覚えるポイント
進行卵巣癌では、初回完全切除の見込みと手術リスクで手術先行か薬物療法先行かを選ぶ。乳癌歴・卵巣癌家族歴から遺伝学的評価も重要。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。