第117回医師国家試験 C63(2023年)
正答:c・d
問題
50歳の女性。発熱と強い動悸のため救急車で搬入された。
現病歴:6日前から咽頭痛と軽度の咳嗽が出現し、自宅近くの診療所で総合感冒薬の処方を受けた。3日前から発熱と前頸部痛が出現し、今朝から強い動悸も自覚したため娘が救急車を要請した。
既往歴:高血圧症でカルシウム拮抗薬を内服している。
生活歴:夫、大学生の娘と3人暮らし。喫煙は20歳から30歳まで10本/日。飲酒歴はない。
家族歴:父が高血圧症。
現症:意識は清明。身長158 cm、体重52 kg。体温37.8 ℃。心拍数118/分、整。血圧134/74 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内と咽頭とに異常を認めない。甲状腺はびまん性に腫大しており、左葉に圧痛を認める。頸部リンパ節の腫大や頸静脈怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に浮腫を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)。赤沈62 mm/1時間。血液所見:赤血球362万、Hb 11.0 g/dL、Ht 32%、白血球6,600、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白7.2 g/dL、アルブミン4.0 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 44 U/L、ALT 49 U/L、LD 207 U/L(基準120〜245)、ALP 262 U/L(基準38〜113)、尿素窒素14 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、血糖98 mg/dL、Na 141 mEq/L、K 3.6 mEq/L、Cl 104 mEq/L、Ca 8.8 mg/dL、TSH 0.08 μU/mL(基準0.2〜4.0)、FT3 9.82 pg/mL(基準2.3〜4.3)、FT4 3.92 ng/dL(基準0.8〜2.2)。免疫血清学所見:CRP 9.2 mg/dL、抗TSH受容体抗体陰性。胸部エックス線写真で心拡大や肺血管影の増強はなく、胸水貯留を認めない。心電図は洞性頻脈でST-T変化を認めない。
この患者の病態に関連するもので適切なのはどれか。2つ選べ。
a.飲酒歴
b.喫煙歴
c.先行する上気道炎症状
d.圧痛のある甲状腺腫大
e.カルシウム拮抗薬の内服歴
正答の理由
上気道炎症状に続く有痛性甲状腺腫、炎症反応上昇、TSH低下と甲状腺ホルモン高値から、亜急性甲状腺炎を考えます。先行する上気道炎と、圧痛を伴う甲状腺腫大が診断の重要な手掛かりです。
各選択肢の検討
a.飲酒歴:本例には飲酒歴がなく、この病態の説明にはなりません。
b.喫煙歴:過去の喫煙歴より、今回の先行感染症状と甲状腺痛が直接的な手掛かりです。
c.先行する上気道炎症状:正しい。上気道炎後に生じることがあります。ただし原因ウイルスが本例で同定されたわけではありません。
d.圧痛のある甲状腺腫大:正しい。無痛性甲状腺炎や典型的なBasedow病と区別する所見です。
e.カルシウム拮抗薬の内服歴:本例の炎症性・有痛性の甲状腺中毒症を説明する主要因ではありません。
覚えるポイント
甲状腺ホルモン高値があっても、ホルモンの新規合成亢進と、濾胞破壊による放出を区別します。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。