胸部外傷後の安静と静脈血栓塞栓症予防|第117回医師国家試験B50

第117回医師国家試験 B50(2023年)

正答:e

問題

65歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。

現病歴:1時間前、自転車で走行中に転倒した。左胸部を強打し、直後から呼吸困難、胸痛および血痰が出現した。当初、痰にわずかに血が混じる程度であったが、徐々に出血の量と回数が増加し呼吸困難も増悪したため、救急外来を受診した。

既往歴:特記すべきことはない。

生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。

家族歴:母が高血圧症。

現症:意識は清明。身長159 cm、体重70 kg。体温37.2 °C。脈拍104/分、整。血圧96/60 mmHg。呼吸数22/分。SpO2 94 %(room air)。皮膚は左側胸部に10×5 cmの出血斑を認める。眼瞼結膜は貧血様である。左側胸部に圧痛を認める。心音に異常を認めない。呼吸音は左上前胸部で減弱している。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に異常を認めない。胸部エックス線写真で左肺の虚脱と左胸腔に胸水の貯留を認めた。

血液検査を行ったところ、以下の結果が得られた。

血液所見:赤血球321万、Hb 9.0 g/dL、Ht 28 %、白血球10,300、血小板12万、Dダイマー0.2 μg/mL(基準1.0以下)。

血液生化学所見:総蛋白5.7 g/dL、アルブミン2.9 g/dL、総ビリルビン0.6 mg/dL、直接ビリルビン0.2 mg/dL、AST 20 U/L、ALT 25 U/L、LD 185 U/L(基準120〜245)、ALP 110 U/L(基準38〜113)、尿素窒素11 mg/dL、クレアチニン0.4 mg/dL、尿酸6.5 mg/dL、血糖85 mg/dL、HbA1c 5.0 %(基準4.6〜6.2)、総コレステロール210 mg/dL、トリグリセリド110 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 101 mEq/L。

治療のためベット上安静が必要であると判断された。

肺塞栓症予防のため有用なのはどれか。

a.酸素投与

b.抗菌薬投与

c.血栓溶解薬投与

d.気管支拡張薬吸入

e.弾性ストッキング着用

正答の理由

安静により下肢静脈の血流が停滞し、深部静脈血栓症と肺塞栓症のリスクが増えます。選択肢では弾性ストッキングによる機械的予防が適切です。外傷性出血が疑われる本例に血栓溶解薬を予防投与しません。実際の予防法は出血・血栓のリスクと下肢の状態を評価して選びます。NICEでは重症外傷に間欠的空気圧迫法を推奨しており、本問の選択肢eがあらゆる外傷例で最優先という意味ではありません。

各選択肢の検討

低酸素への治療にはなりますが、静脈血栓形成そのものを予防しません。

感染症の治療・予防の薬で、静脈血栓塞栓症予防には用いません。

予防目的には用いず、活動性出血のある外傷患者では重篤な出血を招き得ます。

気流制限の治療であり、静脈うっ滞を改善する予防法ではありません。

正しい。適切なサイズと圧で装着して静脈還流を促します。皮膚障害や動脈循環障害などの禁忌・注意点を評価します。

覚えるポイント

安静時は静脈血栓予防を検討し、出血リスクが高い外傷例では機械的予防を選ぶ。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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