第117回医師国家試験 A42(2023年)
正答:d
問題
60歳の女性。血便を主訴に来院した。1週間前から腹痛と1日6回の水様下痢が出現し、自宅近くの医療機関を受診し投薬治療を受けている。昨日から腹痛が増悪し、血便がみられたため受診した。咳や痰はみられない。既往歴に特記すべきことはない。海外渡航歴はない。身長146 cm、体重38 kg。体温37.6 °C。脈拍96/分、整。血圧124/74 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、左下腹部に圧痛を認める。肝・脾を触知しない。腸蠕動音は亢進している。
血液所見:赤血球393万、Hb 11.2 g/dL、Ht 33 %、白血球15,300、血小板49万。
血液生化学所見: 総蛋白6.6 g/dL、アルブミン3.2 g/dL、AST 13 U/L、ALT 11 U/L、LD 138 U/L(基準120〜245)、ALP 72 U/L(基準38〜113)、γ‐GT 10 U/L(基準8〜50)、アミラーゼ40 U/L (基準37〜160)、CK 48 U/L(基準30〜140)、尿素窒素7 mg/dL、クレアチニン0.6 mg/dL、尿酸3.2 mg/dL、血糖103 mg/dL、Na 135 mEq/L、K 3.7 mEq/L、Cl 99 mEq/L。CRP 9.4 mg/dL。胸部エックス線写真で異常を認めない。下部消化管内視鏡検査の直腸像(別冊No.18)を別に示す。
考えられる疾患はどれか。
a.腸結核
b.Crohn病
c.虚血性腸炎
d.潰瘍性大腸炎
e.腸管Behçet病

正答の理由
血便、頻回の下痢、腹痛と炎症反応上昇があり、内視鏡で直腸粘膜のびまん性発赤・血管透見消失・びらんを認めます。直腸から連続する粘膜炎症を特徴とする潰瘍性大腸炎が最も考えられます。
画像の見方
直腸粘膜は広い範囲で発赤し、通常の細かな血管像が見えにくくなっています。表面に多数の浅いびらんと白苔を伴い、局所的な一つの潰瘍ではなく、びまん性の粘膜炎症を示します。
各選択肢の検討
a.回盲部などの輪状潰瘍が代表的で、提示された直腸のびまん性炎症とは異なります。
b.非連続病変、縦走潰瘍や敷石像などが特徴で、本例の直腸びまん性粘膜炎症ではUCを優先します。
c.突然の腹痛に続く血便が典型で、直腸は比較的保たれることが多い疾患です。
d.正しい。直腸のびまん性炎症と血性下痢が合致します。
e.回盲部の深い打ち抜き状潰瘍などが代表で、口腔・眼・皮膚所見も評価します。
覚えるポイント
感染性腸炎や薬剤関連腸炎を除外し、生検組織と病変分布を合わせて診断します。画像1枚だけで全大腸の罹患範囲は決めません。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。