第116回医師国家試験 F67(2022年)
正答:b・e
問題
59歳の男性。呼吸困難のため救急車で搬入された。
現病歴:仕事中に突然の息苦しさが出現した。胸痛は自覚しなかった。早めに帰宅し自宅で安静にしていたが、症状が持続するため救急車を要請した。
既往歴:高血圧症を指摘されたことがあるが、投薬治療は受けていない。
生活歴:職業は銀行員。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:意識は清明。顔貌はやや苦悶様。身長167 cm、体重58 kg。体温36.5 ℃。心拍数108/分、整。血圧134/86 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 99 %(マスク5 L/分酸素投与下)。眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音はⅢ音ギャロップを呈しており、心尖部を最強点とするLevine 4/6の全収縮期雑音を聴取する。呼吸音は両側の下胸部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。
検査所見:血液所見:赤血球442万、Hb 13.8 g/dL、Ht 42 %、白血球7,300、血小板20万。血液生化学所見:LD 218 U/L(基準120〜245)、CK 70 U/L(基準30〜140)、尿素窒素19 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、血糖158 mg/dL。心筋トロポニンT迅速検査陰性。胸部エックス線写真で肺うっ血を認めた。心電図(別冊No.17A)と心エコー図(別冊No.17B)とを別に示す。心エコー検査では左室駆出率は75 %で、局所壁運動異常は認めず、僧帽弁後尖に線維状の構造物の付着を認めた。
弁膜症に対する緊急手術を行うこととなった。
手術までの治療として血行動態の改善が期待できるものはどれか。2つ選べ。
a.β遮断薬投与
b.血管拡張薬投与
c.ジギタリス投与
d.体外式ペースメーカー留置
e.大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉挿入


正答の理由
急性重症僧帽弁逆流には緊急の弁手術が必要です。手術までの橋渡しとして、血圧を監視しながら血管拡張薬で後負荷を減らし、逆流量を軽減して前方拍出を改善します。IABPは収縮期の後負荷を減らす補助手段で、特に循環不安定時に検討します。どの患者にも無条件に挿入する装置ではありませんが、この設問で血行動態改善を期待できる組合せはb、eです。
画像の見方
心電図は各QRSの前にP波を伴う規則的な頻拍です。心エコーでは僧帽弁後尖の逸脱と線維状構造、左房内へ向かう逆流ジェットがみられます。局所壁運動異常のない左室駆出率75 %という本文所見と合わせ、腱索断裂に伴う急性僧帽弁逆流を考えます。
各選択肢の検討
a.誤り。急性の肺うっ血を伴う僧帽弁逆流に、新規β遮断薬をまず投与して循環を改善する状況ではありません。
b.正しい。血管拡張による後負荷軽減で逆流率を減らし、前方拍出を改善します。低血圧時は慎重に判断します。
c.誤り。洞調律で左室駆出率が高い急性逆流に、ジギタリスは手術までの主要な改善手段ではありません。
d.誤り。徐脈や房室ブロックは示されておらず、ペースメーカー留置の適応はありません。
e.正しい。IABPによる収縮期後負荷軽減を、重症急性逆流の手術までの橋渡しとして検討します。
覚えるポイント
急性僧帽弁逆流の手術前は後負荷軽減。血管拡張薬や必要時IABPを用いる。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。