第116回医師国家試験 D51(2022年)
正答:c
問題
32歳の女性。下痢と腹痛を主訴に来院した。半年前から週に2日程度、外出を予定した日に下痢が出現するようになり、3か月前から下痢の時に腹痛を伴うようになったため受診した。症状のない日の便の形状は普通便で、排便回数は1回/日であるが、症状のある日は水様便で、排便回数は5回/日である。排便により症状は一時的に軽快する。家族歴と既往歴に特記すべきことはない。
身長160 cm、体重48 kg(半年間で体重増減なし)。体温36.4 ℃。眼瞼結膜に貧血を認めない。腹部は平坦で、下腹部正中に軽度の圧痛を認めるが反跳痛を認めない。全身の関節に痛みはない。下部消化管内視鏡検査を施行したが異常所見を認めなかった。腹痛に対して抗コリン薬を投与したが症状は変わらなかった。
この患者の治療で適切でないのはどれか。
a.止痢薬投与
b.食物繊維摂取
c.麻薬性鎮痛薬投与
d.プロバイオティクス摂取
e.セロトニン5-HT3受容体拮抗薬投与
正答の理由
排便で軽快する腹痛と便性状・回数の変化があり、体重減少や内視鏡異常がないことから下痢型過敏性腸症候群を考えます。麻薬性鎮痛薬はIBSの腹痛に有用性が示されず、依存や麻薬性腸管症候群による腹痛増悪も問題となるため不適切です。日本消化器病学会2020年版の治療選択肢に照らし、他の4肢は症状に応じて考慮できます。
各選択肢の検討
a.便回数・便性状の改善に用います。止痢薬ロペラミドと、腹痛に対する麻薬性鎮痛薬を混同しません。
b.水溶性食物繊維などを考慮します。不溶性線維は膨満等を悪化させる場合があり、種類と忍容性に注意します。
c.不適切で正答。腹痛改善の根拠が乏しく、依存や腹痛増悪を招くおそれがあります。
d.国内ガイドラインでは考慮する治療です。ただし効果は菌株・製剤により異なり、一律に有効とはしません。
e.ラモセトロン等は下痢型IBSの腹痛・便通症状に用いる選択肢です。
覚えるポイント
IBSの腹痛に麻薬性鎮痛薬を用いない。下痢・腹痛の型に応じた治療を選ぶ。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。