第115回医師国家試験 F40(2021年)
正答:e
問題
74歳の男性。1週前に大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術を施行した。術後経過は良好で退院を目指し、一般病棟でリハビリテーションに励んでいた。昨日から食欲不振があり、今朝から息切れと全身倦怠感を訴えている。
意識は清明。体温36.7 ℃。脈拍100/分、整。血圧94/74 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。頸静脈怒張を認める。心音は減弱。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、胸部正中に手術痕を認める。
血液所見:赤血球352万、Hb 10.7 g/dL、Ht 31 %、白血球8,700、血小板10万。血液生化学所見:アルブミン3.3 g/dL、総ビリルビン1.2 mg/dL、AST 31 U/L、ALT 52 U/L、LD 331 U/L(基準120〜245)、CK 50 U/L(基準30〜140)、尿素窒素30 mg/dL、クレアチニン1.1 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 5.1 mEq/L、Cl 99 mEq/L。CRP 1.2 mg/dL。胸部エックス線写真(別冊No.7A)及び胸部単純CT(別冊No.7B)を別に示す。
症状に最も関連している病態はどれか。
a.気胸
b.貧血
c.縦隔炎
d.胸水貯留
e.心囊液貯留


正答の理由
心臓手術後に血圧低下、頸静脈怒張、心音減弱を認め、心タンポナーデを疑います。CTでは心臓を取り囲む心囊内の液体貯留を認めます。心囊内圧の上昇によって心室の拡張・充満が妨げられ、心拍出量が低下する病態が症状に最も関連します。心エコーで血行動態を評価し、緊急性を判断します。
画像の見方
胸部写真では術後の胸骨ワイヤーと心陰影の拡大を認めます。CTでは心臓を取り囲む心囊内の液体貯留があり、右背側優位の少量胸水も見られます。CTの液体量だけでタンポナーデを確定せず、血圧・頸静脈・心音等の臨床所見と合わせます。
各選択肢の検討
a.呼吸音や画像から、気胸を主因とする所見はありません。
b.軽度の貧血はありますが、頸静脈怒張・心音減弱と心囊内液体貯留をまとめて説明しません。
c.術後に注意すべき病態ですが、発熱や強い炎症反応等に乏しく、本症例の中心は心囊液貯留です。
d.CTで少量の胸水も見られますが、Beckの三徴に相当する循環所見の主因は心囊液貯留です。
e.正しい。心囊内の液体による心充満障害が、血圧低下や頸静脈怒張を説明します。
覚えるポイント
術後の低血圧+頸静脈怒張+心音減弱は心タンポナーデを疑う。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。