第115回医師国家試験 C72(2021年)
正答:a・b
問題
80歳の男性。胸痛のため救急車で搬入された。
現病歴:昨日午後7時ころ夕食中に急に胸部絞扼感を感じた。胸痛は約30分持続したが自然に軽快し、その日は就寝した。本日朝6時、起床時に昨晩と同様の胸痛が出現した。昨夜より症状が強く動けない状態が持続し、その後呼吸困難も生じてきたため救急車を要請し、午前7時に救急搬送された。
既往歴:10年前から高血圧症で通院加療中。
生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は20本/日、60年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:意識は清明。身長155 cm、体重60 kg。心拍数108/分、整。血圧106/86 mmHgで明らかな左右差を認めない。呼吸数20/分。SpO2 94 %(リザーバー付マスク10 L/分酸素投与下)。冷汗を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。心音はⅢ音ギャロップを呈しており、心尖部を最強点とするLevine 3/6の収縮期雑音を聴取する。呼吸音は両側中下胸部に湿性ラ音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。
検査所見:赤血球463万、Hb 13.2 g/dL、Ht 40 %、白血球9,800、血小板28万、総ビリルビン0.5 mg/dL、AST 118 U/L、ALT 32 U/L、LD 320 U/L(基準120〜245)、CK 346 U/L(基準30〜140)、尿素窒素12 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、血糖98 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 97 mEq/L。心筋トロポニンT迅速検査陽性。心電図は心拍数108/分の洞調律で、広範な誘導でST低下を認めた。
この患者の病態で正しいのはどれか。2つ選べ。
a.左房圧は上昇している。
b.僧帽弁閉鎖不全がある。
c.心拍出量は増加している。
d.中心静脈圧は低下している。
e.副交感神経の緊張状態である。
正答の理由
胸痛とトロポニン陽性・広範なST低下から急性冠症候群を考え、湿性ラ音と低酸素は肺うっ血、左房圧上昇を示唆します。心尖部の収縮期雑音から僧帽弁逆流の合併を考えます。虚血性乳頭筋機能不全等が候補ですが、乳頭筋断裂まで問診・聴診だけで確定しません。頸静脈怒張、頻脈、冷汗は静脈うっ血と交感神経反応に対応します。
各選択肢の検討
a.正しい。肺うっ血・肺水腫の背景に左房圧上昇を考えます。
b.正しい。心尖部の収縮期雑音は僧帽弁逆流を示唆し、心エコーで評価します。
c.低心拍出を伴うポンプ不全を考える場面で、心拍出量増加を示す所見ではありません。
d.頸静脈怒張があり、中心静脈圧は上昇を考えます。
e.頻脈・冷汗は交感神経の活性化を示唆します。
覚えるポイント
急性虚血+肺うっ血+新たな心尖部雑音は僧帽弁逆流を評価する。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。