第115回医師国家試験 A40(2021年)
正答:b
問題
70歳の男性。肝腫瘍に対する肝切除術後、ICUに入室した。入室時の脈拍は80/分、整、血圧は150/84 mmHgであった。翌日、朝8時に胸部不快感と強い悪心を訴えた。その後不穏状態となり、顔色は不良、全身に発汗を認める。
体温37.5℃。脈拍68/分、整。血圧は80/48 mmHg。SpO2 94 %(マスク5 L/分酸素投与下)。心音にⅣ音を聴取し、呼吸音は両側でwheezesを聴取する。四肢末梢に冷感を認める。術前の心電図(別冊No.13A)及び胸部症状出現時の心電図(別冊No.13B)を別に示す。ベッドサイドの心エコー検査で左室前壁と下壁に壁運動低下を認めた。
速やかに行うべきなのはどれか。
a.心囊穿刺
b.心臓カテーテル検査
c.肺血流シンチグラフィ
d.下大静脈フィルター留置
e.t-PA〈tissue plasminogen activator〉投与


正答の理由
胸部症状、冷汗・末梢冷感を伴う低血圧に新規のST-T変化と左室壁運動低下があり、急性冠症候群による心原性ショックを強く疑います。速やかに冠動脈造影を含む心臓カテーテル検査を行い、冠動脈病変を確認して必要な血行再建につなげます。たこつぼ症候群等も鑑別に入りますが、まず緊急冠動脈評価を要する状況です。肝切除直後に全身血栓溶解療法を安易に行うこともできません。
画像の見方
術前Aと比較してBでは前胸部誘導を中心にST-T波形が変化し、V3・V4等で明瞭な陰性T波を認めます。胸部症状・ショック・新規左室壁運動低下を合わせて急性心筋虚血を評価します。
各選択肢の検討
a.心囊液貯留やタンポナーデの情報がありません。
b.正しい。循環維持と並行し、冠動脈病変を緊急に評価します。
c.肺塞栓を調べる検査ですが、本例の新規虚血性変化・左室機能低下とショックへの最優先検査ではありません。
d.肺塞栓の予防等で適応を考える処置で、現在の心原性ショックを改善しません。
e.直近の大手術による出血リスクが高く、病態確認とカテーテル治療を優先します。
覚えるポイント
術後でもACSを見逃さない。ショックと新規壁運動低下なら緊急冠動脈評価。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。