第114回医師国家試験 F66(2020年)
正答:d
問題
42歳の男性。息切れを主訴に来院した。
現病歴:先週から労作時に息切れがしていた。食欲も低下し仕事も休んでいたが、息切れが次第に悪化したため来院した。
既往歴:この1年間で帯状疱疹を3回発症し、いずれも抗ウイルス薬で治療した。
生活歴:1人暮らし。喫煙は10本/日。飲酒は機会飲酒。
社会歴:職業はコンサルタント会社勤務。
家族歴:父は肝癌で死亡。
現症:意識は清明。身長175 cm、体重44 kg。体温37.8 ℃。脈拍100/分、整。血圧124/60 mmHg。呼吸数32/分。SpO2 92%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。舌に腫瘤状病変を認める。心音に異常を認めない。両側上胸部で吸気終末にfine cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
検査所見:血液所見:赤血球390万、Hb 10.0 g/dL、Ht 32%、白血球8,200、CD4陽性細胞数35/μL(基準800〜1,200)、血小板12万。血液生化学所見:総蛋白7.2 g/dL、総ビリルビン1.0 mg/dL、直接ビリルビン0.6 mg/dL、AST 22 U/L、ALT 16 U/L、LD 380 U/L(基準120〜245)、CK 30 U/L(基準30〜140)。CRP 7.3 mg/dL、抗HIV抗体スクリーニング検査陽性、Western blot法によるHIV-1抗体確認検査陽性。喀痰抗酸菌染色は3回陰性。クリプトコックス血清抗原陰性。動脈血ガス分析(room air):pH 7.48、PaCO2 30 Torr、PaO2 68 Torr、HCO3− 24 mEq/L。胸部CT(別冊No.13)を別に示す。
呼吸障害の主たる病態として考えられるのはどれか。
a.換気血流比不均衡
b.呼吸筋疲労
c.上気道閉塞
d.肺拡散能障害
e.肺胞低換気

正答の理由
HIV感染による著しい免疫低下、亜急性の呼吸困難、両肺のすりガラス影からニューモシスチス肺炎を疑います。肺胞・間質の障害によりガス交換が障害され、労作時の息切れと低酸素血症を来します。本問は肺拡散能障害を選びますが、実際の低酸素血症には換気血流比不均衡等も関与し、血液ガスだけで機序を一つに限定できるわけではありません。
画像の見方
両側上肺に広がるすりガラス影に網状影や嚢胞状の含気域を伴います。CD4陽性細胞数の著減と合わせ、ニューモシスチス肺炎を疑います。画像だけでは確定せず呼吸器検体等で確認します。
各選択肢の検討
a.本問では選ばない。肺炎の低酸素血症に関与しえますが、びまん性肺病変の本問で問う代表的な病態は拡散障害です。
b.誤り。低換気やCO2貯留を示しておらず、呼吸筋疲労が主因とは考えにくい所見です。
c.誤り。吸気性喘鳴など上気道閉塞を示す所見がありません。
d.正しい。肺胞・間質の障害に伴う拡散障害を考えます。
e.誤り。PaCO2は30 Torrと低値で、肺胞低換気によるCO2貯留の病態ではありません。
覚えるポイント
ニューモシスチス肺炎は拡散能低下を伴うガス交換障害を来す。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。