第114回医師国家試験 C61(2020年)
正答:a・b
問題
46歳の女性。急性虫垂炎の手術のため入院中である。
現病歴:3日前に急性虫垂炎のため虫垂切除術を施行した。昨日から38.0 °Cの発熱を認めているため、本日の朝に診察を行った。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴:父親が膵癌のため68歳で死亡。
現症:意識レベルはJCSⅠ-1、GCS 15(E4V5M6)。身長155 cm、体重48 kg。体温37.2 °C。脈拍112/分、整。血圧78/40 mmHg。呼吸数28/分。SpO2 94 %(room air)。頸部リンパ節に腫脹を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は左下胸部で減弱し、coarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腹部の手術創部に異常を認めない。背部に叩打痛を認めない。両下腿に浮腫を認める。
検査所見:血液所見:赤血球388万、Hb 11.2 g/dL、Ht 36 %、白血球9,800(桿状核好中球39 %、分葉核好中球45 %、好酸球3 %、好塩基球2 %、単球4 %、リンパ球7 %)、血小板18万、Dダイマー3.4 μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白6.5 g/dL、アルブミン2.9 g/dL、尿素窒素21 mg/dL、クレアチニン1.2 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.1 mEq/L、Cl 108 mEq/L。CRP 12 mg/dL、乳酸14 mg/dL(基準5〜20)。胸部エックス線写真(別冊No. 14)を別に示す。血液培養2セットからKlebsiella pneumoniaeが検出された。
酸素投与とともに、生理食塩液1,500 mLを輸液したところ、体温38.1 ℃、脈拍96/分、整。血圧112/64 mmHg、呼吸数24/分、SpO2 97 %(鼻カニューラ3 L/分酸素投与下)となった。
この患者の状態はどれか。2つ選べ。
a.菌血症
b.敗血症
c.多臓器不全
d.敗血症性ショック
e.播種性血管内凝固〈DIC〉

正答の理由
血液培養2セットから細菌が検出されているので菌血症です。肺炎に伴って意識変化や著しい低血圧があり、感染に対する全身反応と臓器障害を伴う敗血症と判断します。一方、輸液後は血圧が112/64 mmHgへ改善し、乳酸は14 mg/dLで上昇していません。十分な輸液後にも昇圧薬が必要で乳酸が2 mmol/Lを超えるというSepsis-3の敗血症性ショックの条件は満たしません。 なお、qSOFAは重症化を疑う手掛かりであり、それだけで敗血症の定義を満たすわけではありません。厳密な臓器障害の評価にはSOFAに必要な項目も確認します。
画像の見方
左下肺野に透過性低下を認め、左横隔膜の輪郭が不明瞭です。左下胸部の呼吸音減弱・coarse cracklesと合わせ肺炎を考えます。胸水の有無や範囲は必要に応じて追加画像で評価します。
各選択肢の検討
a.正しい。血液中にKlebsiella pneumoniaeが検出されています。
b.正しい。感染症に伴い、意識変化や循環障害を認めています。
c.本問では選ばない。複数臓器の明確な機能不全を示す情報はありません。
d.誤り。輸液で循環が改善しており、輸液後も続く昇圧薬必要性・乳酸上昇は示されていません。
e.本問では選ばない。血小板は18万で、Dダイマー上昇だけではDICと診断できません。
覚えるポイント
菌血症は血中の細菌、敗血症は感染に伴う臓器障害。ショックは輸液後の循環と乳酸を評価。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。