第113回医師国家試験 C65(2019年)
正答:a・b
問題
62歳の男性。血便を主訴に来院した。
現病歴:本日夕食後に多量の暗赤色の便が出現し、ふらつきを自覚したため救急外来を受診した。特に腹痛や下痢を自覚していない。
既往歴:30年前から高血圧症と糖尿病で内服治療中。10年前から心房細動に対してワルファリンを処方されている。最近、処方薬の増量や変更はない。
生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は50歳まで20本/日を20年間。飲酒はビール350 mL/日。
家族歴:父親が脳梗塞。母親が大腸癌。
現症:意識は清明。身長169 cm、体重70 kg。体温36.7 ℃。脈拍88/分、不整。血圧114/78 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96 %(room air)。眼瞼結膜は貧血様だが、眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音はやや亢進している。直腸指診で暗赤色の便の付着を認める。四肢に軽度の冷汗を認める。
検査所見:血液所見:赤血球299万、Hb 9.7 g/dL、Ht 32 %、白血球12,000、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白6.5 g/dL、アルブミン3.6 g/dL、総ビリルビン0.9 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 22 U/L、LD 277 U/L(基準176〜353)、γ-GTP 41 U/L(基準8〜50)、アミラーゼ80 U/L(基準37〜160)、尿素窒素18 mg/dL、クレアチニン1.1 mg/dL、尿酸6.7 mg/dL、血糖128 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.5 mEq/L、Cl 100 mEq/L。CRP 1.9 mg/dL。腹部単純CT(別冊No.10A)及び腹部造影CT(別冊No.10B、C)を別に示す。
その後の経過:入院後、翌朝までに赤血球液-LR 6単位の輸血を行ったが、Hb値は8.2 g/dLで血便が持続している。下部消化管内視鏡検査を行ったが多量の凝血塊のため止血術を実施できなかった。
この時点で考慮すべきなのはどれか。2つ選べ。
a.腸管切除術
b.動脈塞栓術
c.血栓溶解療法
d.血漿交換療法
e.高圧酸素療法



正答の理由
輸血を要する出血が持続し、内視鏡で止血できていません。出血部位を確認し、カテーテルによる動脈塞栓術を検討します。塞栓術が困難・無効な場合や重篤な持続出血では、責任部位の腸管切除も選択肢です。aとbを同時に行うという意味ではなく、循環動態、出血部位、施設の対応能力に応じて選びます。ワルファリンへの対応と全身管理も並行します。
画像の見方
単純CTと、造影CTの動脈相・遅延相を比較します。右側結腸に小さな囊状突出を認め、造影後には上行結腸内に高吸収域が出現し、遅延相で拡がっています。活動性の造影剤漏出を疑う所見です。静止画から出血量を定量したり、責任血管を確定したりはしません。
各選択肢の検討
a.正しい。ほかの止血法で制御できない場合などに考慮します。可能な限り出血部位を同定して術式を決めます。
b.正しい。造影CTや血管造影で出血源を評価し、選択的な塞栓で止血を図ります。腸管虚血等の合併症にも注意します。
c.血栓を溶かす治療であり、持続する活動性出血を悪化させる危険があります。
d.本例の憩室出血の局所止血法ではありません。凝固異常に対する治療とも区別します。
e.一部の病態で用いますが、活動性憩室出血に対する止血治療ではありません。
覚えるポイント
内視鏡で止められない持続出血では塞栓術を検討し、難治例では外科手術も考える。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。