第113回医師国家試験 C56(2019年)
正答:a
問題
82歳の女性。転倒し救急車で搬入された。
現病歴:廊下で倒れているところを家族が発見し、救急車を要請した。半年前から階段昇降時の息切れを自覚していた。
既往歴:68歳時から高血圧症のためカルシウム拮抗薬、糖尿病のためビグアナイド薬、75歳時から深部静脈血栓症のためワルファリン、76歳時から不眠症のためベンゾジアゼピン系睡眠薬、骨粗鬆症のためビスホスホネート製剤で治療中。
生活歴:日常生活動作〈ADL〉は自立。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:問いかけに対し名前を言うことができる。身長152 cm、体重42 kg。体温36.6℃。心拍数72/分、整。仰臥位で血圧112/68 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。前頭部に2 cm大の皮下血腫を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察を含む身体診察に異常を認めない。
頭部CTでは皮下血腫のみで頭蓋内に異常を認めなかった。座位にしたところ1分後にふらつきを生じ「目の前が暗くなる」と訴えた。心拍数120/分、整。血圧82/40 mmHg。呼吸数20/分。直腸診で黒色便の付着を認める。静脈路を確保して輸液を開始し、血圧は110/62 mmHgに上昇した。
検査所見:血液所見:赤血球245万、Hb 7.5 g/dL、Ht 24%、白血球9,600、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.5 g/dL、アルブミン3.2 g/dL、AST 20 U/L、ALT 30 U/L、尿素窒素65 mg/dL、クレアチニン0.6 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.5 mEq/L、Cl 108 mEq/L。
この患者において今後の頭蓋内出血の出現を予測する上で、最も注意すべき薬剤内服歴はどれか。
a.ワルファリン
b.ビグアナイド薬
c.カルシウム拮抗薬
d.ビスホスホネート製剤
e.ベンゾジアゼピン系睡眠薬
正答の理由
ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子の作用を抑え、頭部外傷後の頭蓋内出血リスクに関わります。初回CTで出血がなくても、その後の意識・神経症状の変化や凝固状態等に注意します。再検査・観察の方法は受傷状況と臨床経過に応じて判断します。
各選択肢の検討
a.正しい。抗凝固作用があり、頭蓋内出血のリスク評価で特に重要です。
b.糖尿病治療薬であり、凝固を直接抑制する薬剤ではありません。
c.血圧や転倒リスクへの影響には注意しますが、直接的な抗凝固作用はありません。
d.骨粗鬆症治療薬であり、直接的な抗凝固作用はありません。
e.眠気・ふらつきによる転倒には関係しますが、頭蓋内出血の出現リスクではワルファリンを優先して評価します。
覚えるポイント
転倒しやすくする薬剤と、受傷後の出血を増やす薬剤を区別する。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。