第112回医師国家試験 E44(2018年)
正答:d
問題
86歳の男性。右胸部痛と食欲不振とを主訴に来院した。
現病歴:10年前からCOPDのために外来通院中であった。2週間前から微熱、全身倦怠感および食欲不振を自覚していた。昨日、右胸部痛が出現し、本日夜間に39.0℃の発熱と右胸部痛が増悪したため、救急外来を受診した。
既往歴:COPDと高血圧症のため通院中である。
生活歴:妻および長男夫婦と同居している。喫煙は20本/日を70歳まで50年間。飲酒はビール350 mL2、3本/日を50年間。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:意識は清明。身長160 cm、体重52 kg。体温38.8℃。脈拍100/分、整。血圧120/68 mmHg。呼吸数24/分。SpO2 86 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔と咽頭とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺と頸部リンパ節とを触知しない。心音に異常を認めないが、右胸部で呼吸音が減弱している。打診では右肺で濁音を呈する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢の筋力は保たれている。腱反射に異常を認めない。
検査所見:血液所見:赤血球355万、Hb 12.1 g/dL、Ht 36 %、白血球16,500(桿状核好中球25 %、分葉核好中球65 %、好酸球1%、単球2%、リンパ球7%)、血小板40万。血液生化学所見:総蛋白5.9 g/dL、アルブミン2.2 g/dL、AST 29 U/L、ALT 18 U/L、LD 173 U/L(基準176〜353)、ALP 223 U/L(基準115〜359)、γ-GTP 44 U/L(基準8〜50)、CK 260 U/L(基準30〜140)、尿素窒素35 mg/dL、クレアチニン1.6 mg/dL、血糖161 mg/dL、HbA1c 5.7 %(基準4.6〜6.2)、Na 131 mEq/L、K 4.3 mEq/L、Cl 97 mEq/L、Ca 8.4 mg/dL。CRP 31 mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.55、PaCO2 32 Torr、PaO2 56 Torr、HCO3− 28 mEq/L。心電図で異常を認めない。臥位のポータブル胸部エックス線写真(別冊No. 7A)と胸部CT(別冊No. 7B、C)とを別に示す。
この画像所見をきたす原因として最も考えられるのはどれか。
a.低アルブミン血症
b.肺癌の胸膜播種
c.横隔神経麻痺
d.細菌感染
e.腎不全


正答の理由
高熱、胸痛、好中球優位の白血球増加とCRP31 mg/dLがあり、右呼吸音減弱・濁音と右側の被包化した胸水を認める。細菌感染による肺炎随伴性胸水、特に膿胸を含む胸膜感染症を強く疑う。低アルブミン血症もあるが、急性の炎症所見と偏在した胸水の主因としては細菌感染が適切である。膿胸の確定には胸水の性状・検査が必要となる。
画像の見方
胸部エックス線で右胸郭に広い濃度上昇を認める。CTでは右胸腔背側に大きな被包化した液体貯留があり、右肺が圧排されている。発熱・炎症反応と合わせて胸膜感染を疑うが、膿性かどうかは穿刺で確認する。
各選択肢の検討
a.胸水貯留を助長し得るが、高熱・胸痛・著明な炎症反応と被包化した胸水を十分に説明しない。
b.悪性胸水の鑑別は必要だが、この急性の感染徴候では細菌感染を優先して考える。
c.横隔膜挙上の原因にはなるが、CTで確認できる大量の胸水と強い炎症所見を説明しない。
d.正しい。臨床所見と画像から、細菌性の胸膜感染を最も疑う。
e.重い体液過剰を示す病歴や全身所見に乏しく、片側の被包化した胸水と急性炎症は感染を支持する。
覚えるポイント
高熱・胸痛・強い炎症反応に被包化胸水を伴えば胸膜感染を疑う。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。