ST上昇型急性心筋梗塞の初期対応|第112回医師国家試験D53

第112回医師国家試験 D53(2018年)

正答:d

問題

65歳の男性。糖尿病の教育入院中である。退院予定日の午前4時に突然の前胸部痛を自覚し、30分程度我慢したが症状が持続するため、病棟スタッフに訴えた。これまでに同様の症状を自覚したことはない。60歳時から糖尿病に対し経口糖尿病薬で治療中である。家族歴に特記すべきことはない。

意識は清明。体温36.6℃。心拍数104/分、整。血圧160/94mmHg。呼吸数20/分。SpO2 94%(room air)。心雑音はないが、奔馬調律を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。直ちに記録した心電図(別冊No.27)を別に示す。

この患者に対する初期対応として適切でないのはどれか。

a.酸素投与

b.硝酸薬投与

c.静脈路確保

d.アトロピン投与

e.心電図モニター装着

前胸部誘導で著明なST上昇を示す12誘導心電図、記録速度25mm/秒
心電図(別冊No.27) / 出典:厚生労働省・第112回D別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

持続する胸痛と前胸部誘導の著明なST上昇から、ST上昇型急性心筋梗塞を考えます。迅速な再灌流治療の手配と全身管理が必要です。心拍数104/分で徐脈がなく、アトロピンを投与する根拠はありません。なお本問の公式正答はdですが、現在の急性冠症候群の指針ではSpO2 90%以上の患者への酸素の一律投与も推奨されません。94%という値だけで一律に酸素を投与するとは説明できません。

画像の見方

V1〜V4を中心に著明なST上昇があり、胸痛の持続と合わせて前壁領域の急性心筋梗塞を強く疑います。モニター管理を行いながら再灌流治療につなげます。

各選択肢の検討

a.試験上は不適切肢に選ばれていません。ただし2025年ACC/AHA指針では低酸素血症がない場合の一律投与は推奨されず、本例の94%では呼吸状態を含め個別に判断します。

b.本問では適切です。血圧が保たれた虚血症状の緩和に用います。低血圧、右室梗塞、PDE5阻害薬使用等に注意し、再灌流治療の代わりにはしません。

c.適切です。薬剤投与や急変への対応のため静脈路を確保します。

d.正答。不適切です。アトロピンは循環障害を伴う徐脈等に用いる薬で、本例では頻脈を助長し得ます。

e.適切です。心室性不整脈などの致死的合併症を迅速に発見するため連続監視します。

覚えるポイント

ST上昇と持続胸痛では再灌流を急ぐ。アトロピンは徐脈の適応、酸素は低酸素血症の有無で判断する。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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