第112回医師国家試験 C59(2018年)
正答:e
問題
63歳の女性。結腸癌のため開腹手術が予定されている。
現病歴:2か月前に受けた健診で貧血と便潜血反応陽性とを指摘された。2週間前の下部消化管内視鏡検査で上行結腸に腫瘤を認め、生検で大腸癌と診断された。胸腹部CTで転移を認めなかった。上行結腸切除術が予定されている。労作時の息切れや胸部圧迫感、動悸、腹痛、便秘、下痢および体重減少を認めない。
既往歴:45歳ごろから、高血圧症と糖尿病のため内服治療中。
生活歴:営業職で外回りをしている。ゴルフが趣味で現在も続けている。喫煙は20本/日を40年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。
現症:意識は清明。身長155 cm、体重62 kg。体温36.2℃。脈拍84/分、整。血圧154/84 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜は貧血様であり、眼球結膜に黄染を認めない。表在リンパ節を触知しない。頸静脈の怒張を認めない。頸部で血管雑音を聴取しない。胸骨右縁第2肋間にてⅢ/Ⅵの収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白1+、糖(−)。血液所見:赤血球410万、Hb 10.8 g/dL、Ht 34%、白血球6,400、血小板24万、PT-INR 1.0(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.0 g/dL、アルブミン4.0 g/dL、総ビリルビン0.3 mg/dL、AST 26 U/L、ALT 32 U/L、尿素窒素24 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL、血糖116 mg/dL、HbA1c 6.6%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール204 mg/dL、トリグリセリド180 mg/dL、HDLコレステロール46 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 102 mEq/L。CRP 0.3 mg/dL。胸部エックス線写真と心電図とに異常を認めない。
手術後の経過:手術は問題なく終了した。術後4日目早朝の体温は37.5℃であった。意識は清明。脈拍88/分、整。血圧124/70 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。呼吸音に異常を認めない。腹部に圧痛を認めない。手術創周囲に発赤と腫脹とを認めない。肋骨脊柱角に叩打痛を認めない。2時間後に再測定したところ、体温は37.0℃であった。術後4日目の朝の血液検査では、Hb 9.4 g/dL、白血球6,800、CRP 1.7 mg/dLであった。胸部エックス線写真で異常を認めない。
この時点での対応として適切なのはどれか。
a.カルバペネム系抗菌薬投与
b.下部消化管内視鏡検査
c.試験開腹手術
d.全身CT
e.経過観察
正答の理由
術後4日目の37.5℃が2時間後には37.0℃となり、循環・呼吸は安定し、創部・腹部・胸部等に感染や縫合不全を示す所見がありません。この時点では経過観察し、症状・バイタル・創部等を再評価します。「術後の発熱は常に正常」とせず、発熱の持続・再燃や局所症状、全身状態悪化があれば追加検査を行います。
各選択肢の検討
a.感染を示す根拠に乏しく、直ちに広域薬を開始しません。
b.出血や腸管病変を疑う所見がなく、術後早期に侵襲的検査を先行しません。
c.腹膜刺激徴候や循環不全等がなく、再開腹の根拠がありません。
d.軽快した孤立性微熱に、無差別な全身CTを最初から行いません。
e.正しい。継続観察で変化を捉え、必要なら検査・治療を追加します。
覚えるポイント
術後微熱は時期だけで決めず、持続性・局所所見・全身状態で評価。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。