第112回医師国家試験 A55(2018年)
正答:e
問題
35歳の男性。アジ、イカなどの刺身を食べた後に出現した上腹部痛を主訴に来院した。生来健康である。意識は清明。身長170 cm、体重66 kg。体温36.1 ℃。脈拍64/分、整。血圧118/78 mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、心窩部に圧痛を認めるが、反跳痛と筋性防御とを認めない。便通に異常はない。緊急上部消化管内視鏡像(別冊No.25)を別に示す。
この疾患について正しいのはどれか。
a.夏季に多い。
b.腸での発症が多い。
c.魚類摂取後24時間以降に発症する。
d.プロトンポンプ阻害薬が有効である。
e.病態には即時型アレルギー反応が関与する。

正答の理由
生魚・イカの摂取後の上腹部痛と、内視鏡で認める白色の細長い虫体から胃アニサキス症を考えます。虫体の刺入による局所障害に加え、アニサキス抗原に対するIgEを介した即時型反応が関与し得るためeが正答です。ただし、胃アニサキス症の全患者が全身性アレルギーやアナフィラキシーを示すという意味ではありません。胃内の虫体は内視鏡で摘出します。
画像の見方
発赤・浮腫を伴う胃粘膜に、白く細長く曲がった虫体がみられます。魚介類の生食歴と合わせてアニサキスを考えます。内視鏡像だけで全身性IgE反応の有無までは判断できません。
各選択肢の検討
a.夏季の細菌性食中毒と同様には扱いません。年間を通じて起こり、魚介類の摂食状況や地域・時期に左右されます。
b.国内で臨床的に多く報告されるのは胃アニサキス症です。腸病変もありますが、胃内に虫体を認める本例には合いません。
c.胃アニサキス症は通常、摂食後数時間から十数時間で発症します。24時間以降に限りません。
d.酸分泌抑制薬は虫体を除去する治療ではありません。到達可能な胃内虫体の内視鏡的摘出が基本です。
e.正しい。アニサキス抗原に対するIgEを介した即時型反応が関与し、蕁麻疹やアナフィラキシーを起こすこともあります。
覚えるポイント
刺身後の急な心窩部痛では胃アニサキス症を考え、内視鏡で虫体を確認・摘出します。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第112回医師国家試験問題および正答
- 厚生労働省:アニサキス食中毒に関するQ&A
- 食品安全委員会:アニサキスのリスクプロファイル2025(第4章)
- 農林水産省:アニサキスの予防(年間を通じた発生と月別統計)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。