第111回医師国家試験 H33(2017年)
正答:e
問題
55歳の男性。息切れと下腿の浮腫とを主訴に来院した。
**現病歴**:約6か月前から全身倦怠感を自覚していたが他に症状がないので様子をみていた。1か月前から下腿の浮腫を自覚し、次第に労作時の息切れを感じることが多くなったため受診した。
**既往歴**:30歳時に虫垂炎手術。
**家族歴**:父親が80歳時に脳梗塞、母親が82歳時に膵癌で死亡。
**生活歴**:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
**現症**:意識は清明。身長161cm、体重60kg。体温36.2℃。脈拍96/分、整。血圧110/72mmHg。呼吸数20/分。SpO2 90%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。心音はⅢ音とⅣ音とを聴取する。呼吸音は両側下胸部で減弱している。腹部は平坦、軟で、右季肋部に肝を2cm触知する。両下腿に圧痕を伴う浮腫を認める。
**検査所見**:尿所見:蛋白3+、糖(−)、沈渣に異常を認めない。血液所見:赤血球417万、Hb 13.0g/dL、Ht 41%、白血球6,800、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白9.8g/dL、アルブミン2.8g/dL、総ビリルビン0.7mg/dL、AST 34U/L、ALT 26U/L、LD 345U/L(基準176〜353)、ALP 225U/L(基準115〜359)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン2.3mg/dL、血糖79mg/dL、HbA1c 5.3%(基準4.6〜6.2)、Na 138mEq/L、K 4.9mEq/L、Cl 106mEq/L、Ca 10.8mg/dL、P 2.1mg/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉253pg/mL(基準18.4以下)。CRP 0.1mg/dL。心電図は心拍数91/分の洞調律で肢誘導の低電位、左房負荷および不完全左脚ブロックを認める。胸部エックス線写真で心胸郭比は52%で、両側に少量の胸水を認める。心エコー図(別冊No.4A、B)を別に示す。
この患者の心エコーで認められる所見はどれか。
a.右室の虚脱
b.左室内腔の拡大
c.左室駆出率の低下
d.心室中隔の菲薄化
e.左室壁の著明な肥厚

正答の理由
長軸像・短軸像で心室中隔と左室壁が厚く、左室内腔は拡大していません。心電図の低電位との不釣合い、蛋白尿・腎機能障害、心不全所見から心アミロイドーシスを疑います。選択肢では左室壁の著明な肥厚です。壁の厚さはアミロイド沈着による見かけの肥厚を含み、通常の筋細胞肥大と同じ機序ではありません。
各選択肢の検討
a.誤り。心タンポナーデのような右室虚脱を示した画像ではありません。
b.誤り。左室内腔は拡張型心筋症のように拡大していません。
c.誤り。進行した心アミロイドーシスで低下する場合はありますが、提示した拡張期・収縮期比較では収縮が保たれ、主な所見は壁肥厚です。静止画のみから駆出率の具体的数値は出せません。
d.誤り。心室中隔は薄くなく、むしろ厚くみえます。
e.正しい。心室中隔・左室壁の肥厚が明らかです。
覚えるポイント
心室壁肥厚と心電図低電位の不釣合いは心アミロイドーシスの手掛かり。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。