第111回医師国家試験 H23(2017年)
正答:c
問題
48 歳の男性。道路に倒れているところを発見され救急車で搬入された。3か月前から職場の人間関係に悩み、不眠と食欲低下が続き仕事が手につかなくなっていたという。当日は勤務後に居酒屋で大量に飲酒し、川に飛び込んで死のうと橋の欄干に登ったが道路側に転落したという。「今は死にたいとは思わないが、また妻に心配をかけてしまった」と述べる。アルコール臭を認めるが意識は清明。後頭部に皮下血腫を認める。顔面に数個の擦過傷を認める。神経学的所見に異常を認めない。血液生化学所見に異常を認めない。頭部 CT で異常を認めない。
対応として適切でないのはどれか。
a.精神科受診を勧める。
b.自殺をしないよう約束させる。
c.自殺企図のあったことを警察に通報する。
d.大量のアルコール飲用について注意する。
e.家族のサポートが必要であることを説明する。
正答の理由
公式正答は、特別な根拠なく自殺企図を警察へ一律に通報するcです。現在「死にたいと思わない」と述べても、直前の企図、抑うつ症状、大量飲酒があり、身体評価に加えて精神科評価、安全確保、家族との連携が必要です。なおbの「約束させる」も、現在は有効な安全対策として推奨できません。約束で安心せず、相談先、対処行動、危険な手段へのアクセス制限などを含む具体的な安全計画を一緒に作ります。
各選択肢の検討
a.適切。自殺企図と持続する抑うつ症状について精神科評価を手配します。危険性に応じて速やかな評価と保護を行います。
b.試験当時の正答対象外ですが、現在の診療では約束・安全契約だけで自殺を防げるとはしません。有効性がなく、危険性を過小評価するおそれがあるため、具体的な安全計画に置き換えます。
c.適切でない(公式正答)。自殺企図があったことだけで警察へ一律に通報する対応ではありません。現場の切迫した危険など、別の法的・安全上の必要がある場合とは区別します。
d.適切。飲酒は判断力や衝動性に影響するため、飲酒状況を評価し、責めずに再発予防と治療につなげます。
e.適切。本人の安全と情報共有に配慮し、家族の協力、見守り、受診支援を検討します。家族だけに責任を負わせません。
覚えるポイント
公式正答はc。安全契約を安全計画の代わりにしない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第111回医師国家試験問題および正答
- NIMH:Adult Outpatient Brief Suicide Safety Assessment Guide
- NICE NG222:Depression—risk assessment
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。