第111回医師国家試験 G65(2017年)
正答:b
問題
84歳の女性。失神と眼前暗黒感とを主訴に来院した。
現病歴:1週間前から時々気が遠くなるようなふらつきを自覚していたが、本日、朝食前に突然眼前暗黒感を自覚し意識が消失した。意識はすぐに回復したが、心配になり長女に付き添われて救急外来を受診した。
既往歴:60歳ごろから高血圧症と脂質異常症。75歳ごろから骨粗鬆症と逆流性食道炎。80歳ごろから心不全と心房細動で内服治療中。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、スタチン〈HMG-CoA還元酵素阻害薬〉、ビスホスホネート製剤、プロトンポンプ阻害薬およびジゴキシンを処方されている。
生活歴:ADLは自立している。長女夫婦と3人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴:父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。
現症:意識は清明。身長150 cm、体重42 kg。体温35.8 ℃。脈拍36/分、不整。血圧152/70 mmHg。呼吸数20/分。SpO₂ 96 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心尖部を最強点とするⅡ/Ⅵの汎収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球352万、Hb 11.8 g/dL、Ht 36 %、白血球5,800、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.8 g/dL、アルブミン3.9 g/dL、AST 28 U/L、ALT 32 U/L、ALP 164 U/L(基準115〜359)、CK 45 U/L(基準30〜140)、尿素窒素24 mg/dL、クレアチニン1.4 mg/dL、血糖110 mg/dL、HbA1c 5.7 %(基準4.6〜6.2)、Na 133 mEq/L、K 3.6 mEq/L、Cl 97 mEq/L。CRP 0.3 mg/dL。
薬剤を中止したところ状態は改善した。
今回の経過に関連したのはどれか。
a.薬物相互作用
b.薬物排泄の低下
c.薬物代謝の低下
d.薬物吸収の低下
e.服薬アドヒアランスの低下
正答の理由
ジゴキシンは大部分が未変化体として尿中に排泄されます。84歳、42 kgでクレアチニン1.4 mg/dLは腎機能低下を考える所見で、排泄の低下による蓄積が徐脈に関連したと判断します。薬剤中止後の改善も薬剤性を支持します。高齢者ではクレアチニンの数値だけで腎機能を過大評価しないことが重要です。
各選択肢の検討
a.誤り。相互作用はあり得ますが、この症例で最も直接示されている蓄積の背景は腎機能低下です。すべての併用影響を否定する意味ではありません。
b.正しい。腎排泄が主経路であり、腎機能低下時に排泄が遅れて中毒を起こし得ます。
c.誤り。代謝は一部ありますが、主経路である腎排泄の低下が本問の説明です。
d.誤り。吸収低下なら通常は薬物曝露が減り、蓄積性の徐脈を説明しにくくなります。
e.誤り。服薬状況の確認は必要ですが、服薬不良を示す記述はなく、中止で改善した経過と腎機能から蓄積を考えます。
覚えるポイント
ジゴキシンは腎排泄型。高齢・低体重では血清Crが軽度上昇でも蓄積に注意。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。