初回トロポニン陰性の急性冠症候群|第111回医師国家試験E64

第111回医師国家試験 E64(2017年)

正答:d

問題

46歳の男性。心窩部から左前胸部にかけての痛みを主訴に来院した。

現病歴:本日、午前9時、職場の会議中に心窩部から左前胸部にかけての締め付けられるような痛みが出現した。同時に咽頭部と左肩にも痛みを感じたという。そのまま安静にしていたところ、15分程度で改善したため様子をみていたが、午前9時30分、会議終了時に再び発作が生じた。これも15分程度で治まったが、症状が繰り返すため心配になって、仕事を早退して午前10時30分に来院した。

既往歴:10年前から高血圧症と脂質異常症で内服治療中。

生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は40歳まで10本/日を20年間。飲酒は機会飲酒。

家族歴:特記すべきことはない。

現症:意識は清明。身長162cm、体重60kg。脈拍60/分、整。血圧140/80mmHgで左右差を認めない。呼吸数16/分。SpO2 99%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。

検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)。血液所見:赤血球450万、Hb 13.3g/dL、Ht 40%、白血球6,200(桿状核好中球2%、分葉核好中球58%、好酸球3%、好塩基球1%、単球8%、リンパ球28%)、血小板18万、Dダイマー0.6μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:AST 32U/L、ALT 45U/L、LD 260U/L(基準176〜353)、CK 98U/L(基準30〜140)、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL。心筋トロポニンT陰性。胸部エックス線写真(別冊No.14A)と心電図(別冊No.14B)とを別に示す。心エコーで前壁から心尖部にかけて軽度の収縮性低下を認める。

最も疑われるのはどれか。

a.胸膜炎

b.逆流性食道炎

c.肺血栓塞栓症

d.急性冠症候群

e.急性大動脈解離

胸部X線で明らかな肺うっ血・縦隔拡大は目立ちません。心電図は胸部誘導を中心に陰性T波を認めます。
別冊No.14A 胸部X線 / 出典:厚生労働省・第111回E別冊(原本の該当ページ)
胸部X線で明らかな肺うっ血・縦隔拡大は目立ちません。心電図は胸部誘導を中心に陰性T波を認めます。
別冊No.14B 心電図 / 出典:厚生労働省・第111回E別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

安静時に繰り返す締め付ける胸部・心窩部痛、左肩・咽頭への放散、陰性T波と前壁〜心尖部の収縮低下から急性冠症候群を最も疑います。初回の心筋トロポニンTが陰性でも、早期心筋梗塞や不安定狭心症は否定できません。

画像の見方

胸部X線で明らかな肺うっ血・縦隔拡大は目立ちません。心電図は胸部誘導を中心に陰性T波を認めます。

各選択肢の検討

a.誤り。呼吸で増悪する胸痛などが典型で、虚血を支持する心電図・壁運動異常を説明しにくい選択肢です。

b.誤り。心窩部痛の鑑別ですが、今回の心電図変化・局所壁運動低下から心筋虚血を優先します。

c.誤り。陰性T波を生じることはありますが、呼吸困難や低酸素血症に乏しく、病歴・壁運動からACSが最も考えられます。

d.正しい。反復する安静時胸痛と虚血を示唆する所見に合います。経時的評価が必要です。

e.誤り。重要な鑑別ですが、突然の持続する激痛や血圧左右差などに乏しく、本例ではACSを優先します。

覚えるポイント

初回トロポニン陰性だけでACSを除外しない。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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