第111回医師国家試験 D59(2017年)
正答:a・d・e
問題
46歳の女性。軽労作での呼吸困難を主訴に来院した。1年前から長時間歩行時の息切れを自覚していた。最近になって階段昇降や平地歩行でも息切れが出現するようになり、下肢の浮腫も自覚するようになったため受診した。
身長155 cm、体重80 kg。体温36.2 °C。脈拍76/分、整。血圧130/60 mmHg。呼吸数24/分。SpO2 90 %(room air)。胸部の聴診でⅡ音の亢進を認める。両下肢に著明な浮腫を認める。神経学的所見に異常を認めない。12誘導心電図(別冊No.28A)と心エコー図(別冊No.28B)とを別に示す。
この患者の病態の原因として考えられるのはどれか。3つ選べ。
a.膠原病
b.急性右室梗塞
c.僧帽弁閉鎖不全
d.特発性肺動脈性肺高血圧症
e.慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症


正答の理由
進行する労作時呼吸困難、Ⅱ音亢進、低酸素血症と下腿浮腫に加え、心電図の右室負荷、心エコーの右室拡大と左室圧排から、肺高血圧症に伴う右心不全を考えます。公式正答は膠原病に伴う肺動脈性肺高血圧症、特発性肺動脈性肺高血圧症、慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症です。ただし、肺高血圧症の型は提示画像だけでは確定できず、右心カテーテル等で評価します。僧帽弁閉鎖不全も一般には左心疾患に伴う肺高血圧症の原因になるため、cが肺高血圧を起こさないという説明は誤りです。
画像の見方
心電図は右軸偏位、V1の高いR波と前胸部の陰性T波など右室負荷を示します。心エコー短軸像では右室が拡大し、中隔が左室側へ偏位して左室を圧排しています。
各選択肢の検討
a.正しい。全身性強皮症などの膠原病は肺動脈性肺高血圧症の原因になります。
b.誤り。急性右室梗塞は急性の循環不全を来しますが、1年にわたって進行する肺高血圧・右室圧負荷という経過には合いません。
c.公式正答には含まれません。本例では高度右室圧負荷を説明する肺血管病変を想定しています。ただし僧帽弁閉鎖不全は左房圧上昇を介して肺高血圧症を起こし得ます。
d.正しい。原因疾患を認めない肺動脈性肺高血圧症です。他の原因を除外して診断します。
e.正しい。慢性の器質化血栓等による肺動脈閉塞で肺血管抵抗が上がり、肺高血圧症・右心不全を来します。
覚えるポイント
肺高血圧の原因はPAH・左心疾患・肺疾患・CTEPHなどに分類。右室圧負荷画像だけで型を確定しない。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。