第111回医師国家試験 C30(2017年)
正答:b
問題
74歳の男性。胃癌の治療で入院中に胸痛の訴えがあったため当直医が呼ばれた。
現病歴:3日前から消化器外科に入院し、昨日の午後に胃癌に対して幽門側胃切除術を受けていた。本日の夕方に胸痛を自覚したため訪室した看護師に申し出た。
既往歴:50歳時に糖尿病を指摘され内服治療中である。2年前に狭心症で経皮的冠動脈形成術(ステント留置術)を受けており、抗血小板薬を服用中である。
生活歴:喫煙は66歳まで20本/日を35年間。飲酒はビール350mL/日を40年間。
家族歴:父親が糖尿病で脳梗塞のため死亡。
現症:意識は清明。身長169cm、体重65kg。体温36.2℃。脈拍80/分、整。血圧136/72mmHg。呼吸数20/分。SpO2 94%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。四肢に軽度の冷汗を認める。
検査所見(発症前):血液所見:赤血球418万、Hb13.3g/dL、Ht38%、白血球9,300、血小板21万、PT-INR1.1(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.9g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST29U/L、ALT19U/L、LD267U/L(基準176〜353)、ALP283U/L(基準115〜359)、γ-GTP51U/L(基準8〜50)、アミラーゼ75U/L(基準37〜160)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸6.9mg/dL、血糖98mg/dL、HbA1c6.5%(基準4.6〜6.2)、Na138mEq/L、K4.3mEq/L、Cl100mEq/L。CRP1.1mg/dL。
心電図でST-T変化を認め、虚血性心疾患を疑った。
まず確認すべきなのはどれか。
a.血清AST値
b.術前の心電図
c.切除標本の病理所見
d.上部消化管内視鏡所見
e.直近の冠動脈造影所見
正答の理由
術前の心電図と比較し、ST-T変化が新たに出現したかを確認します。既存の虚血性心疾患があるため以前からの異常もあり得ます。比較だけで急性冠症候群を除外せず、症状・経時的心電図・トロポニンなどで速やかに評価します。
各選択肢の検討
a.誤り。ASTは心筋障害に特異的でなく、変化の新旧を判定する最初の情報としては心電図比較が適切です。
b.正しい。今回の波形が基準の状態から変化したかを評価できます。
c.誤り。胃癌の病理所見は今回の急性ST-T変化の評価には直結しません。
d.誤り。急性の心筋虚血をまず評価します。
e.誤り。冠動脈の背景情報として有用ですが、現在の心電図変化の新旧は術前波形との比較で確認します。
覚えるポイント
既往のある患者のST-T変化は過去波形と比較し、急性変化を評価する。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。