第111回医師国家試験 B61(2017年)
正答:e
問題
63歳の男性。吐血のため救急車で搬入された。
現病歴:2年前から食後に心窩部痛を感じていたが、多忙であったために医療機関を受診していなかった。最近になって、常に心窩部不快感があり食欲低下と全身倦怠感とを感じるようになった。2日前に便が黒いことに気付いたが、今朝、排便後に真っ赤な血を大量に吐いたため救急車を要請した。
既往歴:50歳ごろに脳梗塞。抗血小板薬を処方されている。
生活歴:喫煙は20本/日を43年間。飲酒は焼酎1合/日を38年間。
家族歴:父親が胃癌。母親が高血圧症。
現症:意識は清明。身長168 cm、体重72 kg。体温36.3 ℃。心拍数96/分、整。血圧98/68 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96 %(room air)。眼瞼結膜は貧血様だが眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、心窩部に軽度圧痛を認める。表在リンパ節を触知しない。
検査所見:血液所見:赤血球276万、Hb 8.7 g/dL、Ht 28 %、白血球6,400、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白6.8 g/dL、アルブミン3.4 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 45 U/L、ALT 56 U/L、LD 344 U/L(基準176〜353)、ALP 322 U/L(基準115〜359)、γ-GTP 87 U/L(基準8〜50)、アミラーゼ120 U/L(基準37〜160)、CK 78 U/L(基準30〜140)、尿素窒素28 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、尿酸6.3 mg/dL、血糖108 mg/dL、HbA1c 5.8 %(基準4.6〜6.2)、総コレステロール250 mg/dL、トリグリセリド190 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 100 mEq/L。上部消化管内視鏡像(別冊No.7)を別に示す。
その後の治療薬として適切なのはどれか。
a.消化酵素薬
b.胃粘膜保護薬
c.運動機能改善薬
d.蛋白分解酵素阻害薬
e.プロトンポンプ阻害薬

正答の理由
貧血を伴う吐血と、内視鏡で活動性出血を来している胃潰瘍を認めます。内視鏡的止血に続き、プロトンポンプ阻害薬〈PPI〉で胃酸分泌を抑制し、止血後の再出血予防と潰瘍治癒を図ります。酸分泌抑制だけで活動性出血に対する内視鏡的止血を代用するわけではありません。
画像の見方
白苔と暗い凝血塊を伴う潰瘍底から、線状に鮮血が噴出しています。活動性出血のある潰瘍として内視鏡的に止血した後、PPIによる再出血予防を行う状況です。
各選択肢の検討
a.誤り。消化酵素の補充を目的とし、出血性胃潰瘍の止血後治療の中心ではありません。
b.誤り。粘膜防御を補う薬ですが、高リスクの潰瘍出血に対するPPIに代わる治療として選びません。
c.誤り。消化管運動を改善する薬で、潰瘍からの再出血予防に必要な酸分泌抑制を行いません。
d.誤り。膵炎などで使用する薬であり、胃潰瘍の酸分泌抑制薬ではありません。
e.正しい。強力な胃酸分泌抑制により止血後の再出血リスクを低下させ、潰瘍治癒を促します。
覚えるポイント
出血性胃潰瘍は内視鏡的止血と、その後のPPIによる酸分泌抑制を組み合わせる。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。