第110回医師国家試験 F26(2016年)
正答:e
問題
89歳の女性。左膝の痛みを主訴に来院した。
現病歴:3日前から左膝の痛みと38 ℃の発熱が出現した。様子をみていたが症状が改善しないため家族とともに受診した。
既往歴:右変形性膝関節症。
生活歴:息子家族と同居。自宅周辺は押し車で散歩する。
家族歴:妹が関節リウマチ。
現症:意識は清明。体温38.7 ℃。脈拍96/分、整。血圧138/56 mmHg。呼吸数18/分。SpO₂ 97%(room air)。咽頭に発赤を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。左膝関節に発赤、熱感、腫脹、圧痛および膝蓋跳動を認める。
検査所見:血液所見:赤血球404万、Hb 12.1 g/dL、Ht 36%、白血球6,300、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.8 g/dL、アルブミン3.4 g/dL、総ビリルビン0.6 mg/dL、AST 14 IU/L、ALT 11 IU/L、LD 168 IU/L(基準176〜353)、尿素窒素20 mg/dL、クレアチニン0.5 mg/dL、尿酸5.3 mg/dL。CRP 2.1 mg/dL。左膝関節エックス線写真を撮影後に左膝関節を穿刺し、関節液は黄色混濁である。左膝関節エックス線写真(別冊No. 4A)と膝関節穿刺液のGram染色標本(別冊No. 4B)とを別に示す。
a.膝関節造影
b.膝関節MRI
c.膝関節鏡検査
d.⁶⁷Gaシンチグラフィ
e.関節液偏光顕微鏡観察


正答の理由
急性の熱感・腫脹を伴う膝関節炎では感染性関節炎と結晶誘発性関節炎の鑑別が必要である。関節液の偏光顕微鏡観察で結晶を同定する。高齢者の偽痛風は発熱と混濁関節液を呈し、膝X線の軟骨石灰化も診断を支持する。
画像の見方
正面像で関節軟骨に線状石灰化があり、Gram染色標本に結晶様構造を認める。
各選択肢の検討
a.誤り。関節造影は急性炎症の原因となる結晶や感染を同定する検査ではない。
b.誤り。MRIは軟部組織や骨髄の評価に有用だが、関節液中の結晶を同定できない。
c.誤り。関節鏡は侵襲的で、まず採取した関節液を顕微鏡・培養等で調べる。
d.誤り。⁶⁷Gaシンチグラフィは炎症部位の評価に用いることがあるが、結晶性関節炎の診断には直接的でない。
e.正しい。偏光顕微鏡で関節液中の尿酸塩結晶またはピロリン酸カルシウム結晶を検出し、結晶誘発性関節炎を鑑別できる。
覚えるポイント
急性単関節炎では関節液を検査し、結晶と感染の両方を評価する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第110回医師国家試験問題および正答
- Synovial fluid analysis (PubMed)
- Guideline for management of septic arthritis in native joints (SANJO)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。