第107回医師国家試験 I8(2013年)
正答:d
問題
高齢者の高血圧症の特徴はどれか。
a.拡張期血圧が高い。
b.血圧の日内変動が小さい。
c.起立時に血圧が上昇しやすい。
d.脳血流の自動調節能が低下している。
e.降圧薬の投与で脳血管障害の発症は減少しない。
正答の理由
高齢者高血圧は、大血管の弾力性低下により収縮期血圧が上昇し拡張期血圧は低めとなる収縮期高血圧が多く、圧受容体反射の低下から血圧動揺性が大きく、起立性低血圧・食後低血圧・夜間降圧の異常を来しやすいのが特徴です。脳の小動脈のリモデリングにより脳血流の自動調節が制限され、一過性・急激な血圧低下で局所虚血を起こしやすいため、緩徐な降圧が勧められます。一方で降圧治療は高齢者でも脳卒中を減らします(HYVET)。答えはdです。
各選択肢の検討
a.誤り。加齢で大動脈が硬くなり脈波反射が早まるため、収縮期血圧と脈圧が上昇し拡張期血圧はむしろ低めになる(収縮期高血圧)のが典型です。
b.誤り。高齢者では血圧調節能が低下し、体位・食事・気温・情動で血圧が大きく揺れ、夜間降圧の消失や早朝高血圧など日内変動の異常も目立ちます。
c.誤り。圧受容体感受性の低下により、起立時には血圧が上昇ではなく低下しやすく、高齢高血圧患者の最大3割に起立性低血圧がみられます。
d.正しい。高齢高血圧患者では脳の小動脈の内向きリモデリングと筋原性緊張の亢進により血管反応性が損なわれ、脳血流の自動調節が制限されるため、一過性・急激な血圧低下で局所虚血を起こしやすくなります。そのため急激な降圧を避け、時間をかけて降圧します。
e.誤り。80歳以上を対象としたHYVETでは、降圧治療で致死的・非致死的脳卒中が30%(P=0.06)、脳卒中死が39%(P=0.05)減少し、総死亡も21%減少しました。高齢者でも降圧は脳血管障害の減少につながります。
覚えるポイント
高齢者高血圧=収縮期高血圧・血圧動揺性(起立性低血圧)・臓器血流自動調節能の低下。緩徐に降圧すれば脳卒中は減る。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第107回医師国家試験問題および正答
- 超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き 5 高血圧(日本医師会, 2021)
- Lee JH, Kim KI, Cho MC. Current status and therapeutic considerations of hypertension in the elderly. Korean J Intern Med. 2019
- Beckett NS, et al. Treatment of hypertension in patients 80 years of age or older (HYVET). N Engl J Med. 2008 – PubMed
- MSD Manual Professional Edition: Hypertensive Emergencies
- Laurent S, Boutouyrie P. Arterial Stiffness and Hypertension in the Elderly. Front Cardiovasc Med. 2020;7:544302
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。