第107回医師国家試験 F15(2013年)
正答:d
問題
研修医が学会での症例報告の原稿を準備している。発表は明後日に迫っている。症例の記述、診断手順、実施された治療などの執筆は問題なく終了した。しかし、考察で何を論じればよいか全くわからなかった。指導医師は明日朝一番で予行演習を行うよう指示した。研修医は今まで集めた論文の考察部分から段落ごと文章を抜き出し、参考文献として言及することなく自分自身の考察として記述した。
このまま発表する場合に該当する不正行為はどれか。
a.偽造
b.捏造
c.二重投稿
d.ひょう窃(盗用)
e.ギフト・オーサーシップ
正答の理由
他の論文の文章を、出典を示さず自分の考察として使うことは、他の研究者のアイディア・論文・用語を了解または適切な表示なく流用する「盗用(ひょう窃)」に当たります。出題当時の科学技術・学術審議会「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」(2006年)も、盗用を「他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること」と定義しており、現行の文部科学大臣決定ガイドライン(2014年)も同じ定義で捏造・改ざん・盗用を特定不正行為としています。
各選択肢の検討
a.誤り。本例は存在しないデータを作ったり、資料・結果を真正でない形に加工したりしたものではありません。データの改変はガイドラインでは「改ざん」と呼ばれます。
b.誤り。捏造は存在しないデータや研究結果を作り出すことです。症例の記述などは事実に基づいており、本例は他人の文章の流用です。
c.誤り。二重投稿は既発表または投稿中の自分の論文と本質的に同じ論文を他誌などに投稿することで、他人の文章の無断使用とは異なります。2006年のガイドラインも「同じ研究成果の重複発表」を不正行為の代表例に挙げています。
d.正しい。他の論文の文章を出典を示さずに自分の考察として使うことは、適切な表示なく他人の論文・用語を流用する盗用(ひょう窃)です。
e.誤り。ギフト・オーサーシップは研究に十分貢献していない人を著者に加える不適切なオーサーシップで、本例の行為には当たりません。2006年のガイドラインは「論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップ」を不正行為の例に挙げています。
覚えるポイント
他人の文章・アイディアを出典なく自分のものとして使うのは盗用(ひょう窃)。特定不正行為=捏造・改ざん・盗用。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第107回医師国家試験問題および正答
- 研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて-研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書-(科学技術・学術審議会、平成18年8月8日)
- 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(文部科学大臣決定、平成26年8月26日)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。