第107回医師国家試験 E10(2013年)
正答:a
問題
嵌頓しやすいのはどれか。
a.大腿ヘルニア
b.内鼠径ヘルニア
c.乳児臍ヘルニア
d.腹壁瘢痕ヘルニア
e.Morgagni孔ヘルニア
正答の理由
大腿ヘルニアは鼠径靱帯の下の狭く硬い大腿輪から脱出するため、ヘルニア門が小さく、嵌頓・絞扼を起こしやすいヘルニアです。国際ガイドラインでも鼠径ヘルニアより嵌頓・絞扼のリスクが高く、症状が乏しくても早期手術が推奨されます。
各選択肢の検討
a.大腿ヘルニア。正しい。大腿ヘルニアは鼠径ヘルニアより嵌頓・絞扼のリスクが高く、北欧の登録研究では36〜39%が緊急手術(鼠径ヘルニアは5%)でした。中高年の女性に多い点も重要です。
b.内鼠径ヘルニア。誤り。内鼠径ヘルニア(直接ヘルニア)は鼠径管後壁の脆弱部から膨隆し、門が広いことが多いため、外鼠径ヘルニアに比べ絞扼を起こしにくいとされます。
c.乳児臍ヘルニア。誤り。乳児の先天性臍ヘルニアは絞扼することがまれで、多くは数年以内に自然閉鎖するため、原則として経過観察とします。
d.腹壁瘢痕ヘルニア。誤り。腹壁瘢痕ヘルニアは手術創の筋膜欠損部から生じ、他のヘルニアと同様に嵌頓・絞扼・腸閉塞を起こしえますが、本問の選択肢の中で嵌頓しやすさの代表として扱われるのは門の狭く硬い大腿ヘルニアです(瘢痕ヘルニアは門が広い例が多いと一般にいわれますが、その頻度を示す一次資料は本解説では未確認です)。
e.Morgagni孔ヘルニア。誤り。Morgagni孔ヘルニアは胸骨後方の横隔膜前部の欠損(Morgagni孔)から生じる先天性横隔膜ヘルニアで、症状があるのは約3割にとどまり、無症状で偶然見つかることが多いヘルニアです。絞扼の危険はあるため治療対象にはなりますが、嵌頓しやすいヘルニアの代表ではありません。
覚えるポイント
門が狭く硬い大腿ヘルニアは嵌頓・絞扼しやすく、診断したら早期手術。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第107回医師国家試験問題および正答
- International guidelines for groin hernia management(HerniaSurge Group, Hernia 2018)
- Hernias of the Abdominal Wall(MSD Manual Professional Edition)
- Direct inguinal hernia(Radiopaedia, Wijayagoonawardana P, Zambrano A, Elfeky M)
- Incisional hernia(Radiopaedia, Gaillard F, Kumar K, Knipe H)
- Morgagni hernia(Radiopaedia, Jones J, Silverstone L, Sharma R, et al.)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。