第107回医師国家試験 D22(2013年)
正答:a
問題
32歳の男性。不眠を主訴に来院した。消防隊員として大規模災害の支援に災害発生の翌日から派遣され、厳しい状況下で2週間救助活動を行った。その後元の職場に戻り、しばらくは問題なく過ごし、むしろ以前よりも真剣に仕事をこなしていた。しかし救助活動から戻った約2か月後から何度も夜中に覚醒するようになり、いらいらして集中力も落ちてきたため産業医に相談し受診した。特記すべき既往歴はない。仕事への意欲はあり、疲労感の増大はみられない。
診断のために重要な質問はどれか。
a.「嫌な情景が急に浮かんでくることがありますか」
b.「家族につらい症状を話すと少しは楽になりますか」
c.「今晩も眠れないのではないかと不安になりますか」
d.「ひどく気持ちが落ち込んで、それが何日も続いていますか」
e.「以前は楽しかったことを楽しめなくなったように感じますか」
正答の理由
大規模災害での救助活動という外傷的出来事の後、約2か月して中途覚醒・易刺激性・集中困難(過覚醒症状)が出現しています。PTSDは外傷から数か月以上たって発症することもあります。診断には、外傷体験が意図せず繰り返し想起される侵入症状(フラッシュバック・悪夢)の有無を確かめることが欠かせず、aの質問がこれに当たります。意欲は保たれ、疲労感もないため、うつ病を第一に考える状況ではありません。
各選択肢の検討
a.正しい。嫌な情景が急に浮かぶかを尋ねるのは侵入症状(フラッシュバック)の確認で、PTSDの中核症状を評価する質問です。
b.誤り。家族に話して楽になるかは社会的支援や対処の状況を知る質問で、特定の疾患の診断基準には直結しません。
c.誤り。眠れないことへの予期不安は不眠そのもの(精神生理性不眠)でもみられる非特異的な訴えで、外傷との関連を判断できません。
d.誤り。抑うつ気分の持続はうつ病の中核症状を尋ねる質問です。本例は意欲が保たれ疲労感もなく、外傷後の発症経過からはPTSDに特異的な侵入症状の確認が優先されます。
e.誤り。興味・喜びの喪失はうつ病の中核症状で、PTSDの気分の陰性変化でもみられますが非特異的です。外傷に結び付く診断の決め手にはなりません。
覚えるポイント
外傷体験の後に過覚醒が出たら、侵入症状(フラッシュバック・悪夢)を尋ねてPTSDを確認する。発症が数か月遅れることもある。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。