第106回医師国家試験 G2(2012年)
正答:c
問題
密封小線源治療の適応があるのはどれか。
a.腎癌
b.膀胱癌
c.前立腺癌
d.陰茎癌
e.セミノーマ
正答の理由
密封小線源治療(組織内照射)は、放射線を出す物質を小さな容器に密封した線源を腫瘍の中やすぐ近くに置き、周囲の正常組織を避けながら腫瘍に高い線量を集中させる方法です。前立腺癌では、放射性シードを会陰から前立腺内に永久挿入する低線量率治療や、イリジウム192を用いる高線量率治療が限局癌の根治治療として確立しており、悪性度の高いものでは外照射と併用します。前立腺肥大症で経尿道的切除を受けた人には行えないなどの制約もあります。 なお陰茎癌でも、現行の欧州泌尿器科学会(EAU)ガイドラインでは4 cm未満のT1〜T2病変に対する臓器温存療法として組織内照射(単独または外照射との併用)が挙げられており、医学的には小線源治療の適応がないとはいえません。公式正答は前立腺癌(c)のみで、本問は泌尿器癌の中で小線源治療が標準的治療として広く確立している前立腺癌を選ばせる問題として理解しておくのが妥当です。
各選択肢の検討
a.腎癌誤り。腎細胞癌の根治治療は手術(腎摘除・部分切除)で、小さな腫瘍では凍結療法も選ばれます。放射線治療は骨・脳転移の症状緩和などに用いる外照射が中心で、小線源治療の適応ではありません。
b.膀胱癌誤り。膀胱癌はTURBT、膀胱内注入療法、膀胱全摘除術が中心で、膀胱温存療法でもTURBT・化学療法と外照射を組み合わせます。小線源治療は標準治療ではありません。
c.前立腺癌正しい。限局性前立腺癌に対する放射性シード永久挿入や高線量率組織内照射が代表的な密封小線源治療です。
d.陰茎癌誤り(公式正答上)。陰茎癌の治療の基本は切除(陰茎部分切除・全切除、リンパ節郭清)です。ただし現行のEAUガイドラインでは、4 cm未満のT1〜T2病変に対して組織内照射(単独、または外照射に追加)が臓器温存の選択肢とされ、局所制御率70〜90%と報告されています。医学的には適応がありうる点に留保が必要ですが、公式正答はcのみです。
e.セミノーマ誤り。セミノーマは放射線感受性が高い腫瘍ですが、用いられてきたのは高位精巣摘除術後の傍大動脈領域への外照射であり、小線源治療ではありません。現在のⅠ期では経過観察(サーベイランス)が望ましく、補助療法でもカルボプラチン単回投与が外照射に大きく取って代わっています。
覚えるポイント
泌尿器癌で密封小線源治療(シード永久挿入・高線量率組織内照射)が確立しているのは前立腺癌。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- 前立腺癌(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 前立腺がん 治療(国立がん研究センター がん情報サービス)
- 陰茎癌(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 精巣腫瘍(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 腎細胞癌(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 膀胱癌(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- EAU Guidelines on Penile Cancer: Management(European Association of Urology)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。