第106回医師国家試験 F23(2012年)
正答:b
問題
81歳の女性。路上でうずくまって動けなくなっているところを近隣住民に発見されて搬入された。皮膚に外傷を認めない。認知機能の低下、低栄養および脱水状態を認める。着衣は汚く、不潔な状況である。近隣住民によると、息子との2人暮らしであるが、近所付き合いはほとんどないという。息子とは連絡がとれない。
診療と並行して行うべき対応で適切なのはどれか。
a.介護保険施設への入所手続きを行う。
b.地域包括支援センターに連絡する。
c.医療安全支援センターに連絡する。
d.社会福祉事務所に連絡する。
e.医療保護入院させる。
正答の理由
認知機能が低下した高齢者が、同居の息子がいるにもかかわらず低栄養・脱水・不潔な状態で発見されています。養護者による「介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)」を疑う状況です。高齢者虐待防止法では、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は市町村へ通報し、市町村や地域包括支援センターの高齢者虐待対応窓口が相談・通報を受けて事実確認と支援にあたります。医療機関は治療と並行して地域包括支援センターに連絡し、退院後の生活を含めた支援につなげます。
各選択肢の検討
a.誤り。介護保険施設への入所には要介護認定や本人・家族の意向の確認、市町村などとの調整が必要で、事実確認や支援方針が決まる前に病院が先行して手続きする対応ではありません。
b.正しい。地域包括支援センターは高齢者の権利擁護(虐待の相談・通報対応)を担う窓口で、市町村と連携して事実確認・安全確保・養護者支援を進めます。
c.誤り。医療安全支援センターは都道府県などに置かれ、医療に関する患者・家族の苦情や相談に対応する機関であり、高齢者虐待の対応窓口ではありません。
d.誤り。福祉事務所は生活保護などを担う行政機関ですが、高齢者虐待の相談・通報の窓口として法律が定めるのは市町村(および委託を受けた地域包括支援センター)です。
e.誤り。医療保護入院は精神障害のため医療と保護が必要で、本人の同意による入院ができない場合に家族等の同意で行う精神科の入院形態です。本例の身体的な治療入院や虐待対応とは目的が異なり、適応になりません。
覚えるポイント
高齢者虐待(ネグレクト)を疑ったら、治療と並行して市町村・地域包括支援センターへ通報・相談する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- 厚生労働省老健局:市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(平成30年3月)Ⅰ 高齢者虐待防止の基本
- 厚生労働省:医療安全対策について:医療安全支援センター体制図
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。