第106回医師国家試験 E55(2012年)
正答:d・e
問題
55歳の男性。左中大脳動脈領域の脳梗塞で2週前から入院中である。意識は清明。右片麻痺と失語症とが残存している。食欲はあり、臥位から座位になることがかろうじて自力でできるものの、車椅子やポータブルトイレへの移動には介助が必要である。患者本人はリハビリテーションに意欲的で、自宅での生活を希望している。妻と2人暮らしで、同じ町内には娘が暮らしている。
地域連携クリニカルパスに沿った対応はどれか。2つ選べ。
a.成年後見制度の利用を勧める。
b.特定機能病院への転院を勧める。
c.特別養護老人ホーム入所の手続きを行う。
d.医療ソーシャルワーカーとの面談を設定する。
e.回復期リハビリテーション病棟を有する病院に患者情報を提供する。
正答の理由
脳卒中の医療は、急性期の治療と廃用予防のリハビリ、回復期の機能回復・ADL向上のための集中的リハビリ、維持期の生活機能維持と在宅支援へと病期ごとに担い手が変わります。厚生労働省の指針では、回復期の医療機関の例に「回復期リハビリテーション病棟を有する病院」を挙げ、各期の医療機関が診療情報や治療計画を共有して連携すること、その導入率を指標とする地域連携クリティカルパスを示しています。本例は発症2週で急性期を脱しつつあり、片麻痺・失語が残るものの意欲があり、自宅復帰を希望し家族の支援も見込めるため、回復期リハビリ病院への転院が次の段階です。転院先の調整や医療費・介護サービスなど社会資源の相談は医療ソーシャルワーカーが担うため、面談を設定し、転院先へ患者情報を提供します。
各選択肢の検討
a.成年後見制度の利用を勧める。誤り。成年後見は判断能力が不十分な人の財産管理や契約を支える制度です。本例は意識清明でリハビリへの意思も示しており、失語があっても判断能力の喪失を示す所見はありません。
b.特定機能病院への転院を勧める。誤り。特定機能病院は高度医療の提供・開発・研修を担います。本例の次の目標は集中的な回復期リハビリであり、特定機能病院という区分を理由に転院を勧める状況ではありません。
c.特別養護老人ホーム入所の手続きを行う。誤り。発症2週で機能回復の余地が大きく、本人は自宅生活を希望しています。回復期リハビリを経ずに介護施設へ入所させるのはパスの流れに反します。
d.医療ソーシャルワーカーとの面談を設定する。正しい。転院先の調整、経済的問題、退院後に必要な介護サービスなど社会資源の相談を担い、病期をつなぐ連携の窓口になります。
e.回復期リハビリテーション病棟を有する病院に患者情報を提供する。正しい。急性期から回復期の医療機関へ診療情報と治療計画を引き継ぐことが地域連携クリニカルパスの中心です。
覚えるポイント
脳卒中の地域連携パスは急性期→回復期(回復期リハ病棟)→維持期・在宅へ診療情報を共有して引き継ぐ仕組み。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- 脳卒中の医療体制構築に係る指針(厚生労働省 医療計画の医療体制構築に係る指針、2007年)
- 厚生労働省:医療ソーシャルワーカー業務指針(平成14年11月29日)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。