第106回医師国家試験 E27(2012年)
正答:e
問題
原発性肺癌患者の胸部造影CT(別冊No. 4)を別に示す。
この画像所見から、まず生じることが想定されるのはどれか。
a.食道通過障害
b.左横隔膜挙上
c.チアノーゼ
d.顔面浮腫
e.嗄声

正答の理由
左反回神経は大動脈弓の高さで左迷走神経から分かれ、大動脈弓の下を後方へくぐって気管と食道の間を頸部へ上行します。CTでは大動脈弓下の大動脈肺動脈窓(大動脈と肺動脈の間)に軟部腫瘤があり、この経路を巻き込むため、左反回神経麻痺による嗄声がまず想定されます。肺や縦隔の腫瘍は反回神経麻痺の代表的な原因です。
画像の見方
別冊No. 4(tp_siken_106_ishi_e2.pdf 第8頁)。上行大動脈と下行大動脈の間、気管の左側の大動脈肺動脈窓に、造影効果の乏しい軟部組織腫瘤(腫瘍またはリンパ節転移とみられる)があります。上大静脈は上行大動脈の右側に造影されて保たれ、気管後方の食道や肺野に圧排・閉塞所見はみられません。病変の性状は原本に記載がなく、画像からの読影です。
各選択肢の検討
a.食道通過障害。誤り。食道は気管の後方で保たれています。肺癌による食道圧迫での嚥下障害はまれで、本画像の所見から最初に起こるものではありません。
b.左横隔膜挙上。誤り。横隔神経が浸潤されると片側横隔膜挙上が起こりますが、本例の病変の位置(大動脈弓下・気管の左側)からまず想定されるのは、そこを通る左反回神経の障害です。
c.チアノーゼ。誤り。主気管支の閉塞や広範な肺病変による低酸素で生じるもので、本画像では気管・主気管支の閉塞や無気肺はみられません。
d.顔面浮腫。誤り。上大静脈症候群の症状ですが、上行大動脈右側の上大静脈は造影されて圧排がなく、本例の病変は左側の大動脈肺動脈窓にあります。
e.嗄声。正しい。大動脈肺動脈窓の病変が大動脈弓をくぐる左反回神経を障害し、声帯麻痺による嗄声を起こします。
覚えるポイント
大動脈肺動脈窓(大動脈弓下)の腫瘤・リンパ節腫大は左反回神経麻痺→嗄声。上大静脈圧迫は顔面浮腫、横隔神経は横隔膜挙上。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- MSD Manual Professional: Lung Carcinoma
- MSD Manual Professional: Vocal Fold Paralysis
- Jaxa-Kwiatkowska A, et al. Hoarseness as a Rare Symptom of Idiopathic Pulmonary Arterial Hypertension Due to Ortner Syndrome: A Case Report. Am J Case Rep 2025(Europe PMC, PMC11957312)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。