腹部診察所見と疾患|第106回医師国家試験C10

第106回医師国家試験 C10(2012年)

正答:d

問題

腹部診察所見と病態・疾患の組合せで誤っているのはどれか。

a.下腹部の膨隆――尿閉

b.腹壁の反跳痛――腹膜炎

c.肺肝境界の消失――消化管穿孔

d.臍周囲の血管雑音――門脈圧亢進症

e.無痛性の右季肋部腫瘤――十二指腸乳頭部癌

正答の理由

臍周囲〜心窩部で聴取される収縮期から拡張期に及ぶ血管雑音(bruit)は、腎動脈狭窄による腎血管性高血圧をほぼ特徴づける動脈性の所見です。門脈圧亢進症で典型的なのは腹壁の側副血行路(静脈怒張)、脾腫、腹水です。臍傍静脈が太く開存するCruveilhier-Baumgarten症候群では臍部に連続性の静脈コマ音(venous hum)を聴くことがありますが、これは門脈圧亢進症の中でもまれな病態で、動脈性の「血管雑音」とは区別されます。公式正答はdで、「臍周囲の血管雑音」を腎血管性高血圧の所見として対応させる出題と考えられます。ただし門脈圧亢進症でも臍部に静脈性雑音を聴く例があることは知っておきます。

各選択肢の検討

a.下腹部の膨隆――尿閉。正しい組合せ。膀胱に尿がたまって拡張すると、恥骨上〜下腹部の膨隆と痛みを生じます。

b.腹壁の反跳痛――腹膜炎。正しい組合せ。圧迫した手を急に離したときの痛み(反跳痛)は、筋性防御・硬直とともに腹膜刺激徴候です。

c.肺肝境界の消失――消化管穿孔。正しい組合せ。腹腔内に漏れた遊離ガスが肝前面にたまり、打診で肝濁音界が消失します。穿孔性腹膜炎の診察所見として頻度が高い所見です。

d.臍周囲の血管雑音――門脈圧亢進症。誤った組合せ(正答)。臍周囲〜心窩部の収縮期・拡張期の血管雑音はまず腎動脈狭窄(腎血管性高血圧)を考えます。門脈圧亢進症で聴かれ得るのは臍傍静脈が開存したまれな例(Cruveilhier-Baumgarten症候群)の静脈コマ音で、典型的な対応ではありません。

e.無痛性の右季肋部腫瘤――十二指腸乳頭部癌。正しい組合せ。黄疸のある患者で無痛性に腫大した胆囊を触れる所見(Courvoisier徴候)は、膵頭部癌・乳頭部癌・遠位胆管癌など下部胆道の悪性閉塞を示唆します。

覚えるポイント

臍周囲〜心窩部の収縮期・拡張期血管雑音は腎血管性高血圧。門脈圧亢進症の臍部静脈コマ音(Cruveilhier-Baumgarten)はまれ。黄疸+無痛性胆囊腫大(Courvoisier徴候)は下部胆道の悪性閉塞。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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