第106回医師国家試験 B31(2012年)
正答:e
問題
放射線感受性の比較で正しいのはどれか。
ただし、「A>B」はAがBよりも放射線感受性が高いことを示す。
a.腺癌 > 扁平上皮癌
b.神経細胞 > 骨髄細胞
c.分化した細胞 > 未分化な細胞
d.細胞周期S期 > 細胞周期M期
e.酸素分圧が高い組織 > 酸素分圧が低い組織
正答の理由
X線などの放射線による生体障害では、電離で生じたフリーラジカルが大きな役割を果たします。酸素はラジカルによるDNA損傷を固定して放射線効果を高めるため、酸素分圧が高い組織ほど感受性が高く、低酸素(おおむね10 mmHg未満)の組織は抵抗性になります(酸素増感比OERは高線量域で約3、臨床の1回2 Gy前後では約2)。腫瘍内の低酸素細胞が放射線治療の効きにくさの一因になるのはこのためです。
各選択肢の検討
a.腺癌 > 扁平上皮癌:誤り。一般に扁平上皮癌のほうが腺癌より放射線感受性が高いとされます。子宮頸部では腺癌が扁平上皮癌より放射線感受性が低いことが臨床研究で示唆され、食道癌の術前化学放射線療法でも扁平上皮癌が多い集団で病理学的完全奏効が多いことがこの差で説明されています(組織型だけで決まるわけではない一般的傾向です)。
b.神経細胞 > 骨髄細胞:誤り。分裂の盛んな骨髄の造血細胞は放射線でアポトーシスを起こしやすく、急性放射線症候群では造血障害が主要な病型になります。ほとんど分裂しない中枢神経の細胞は感受性が低く、障害は主に晩期反応として現れます。
c.分化した細胞 > 未分化な細胞:誤り。Bergonié-Tribondeauの法則のとおり、分裂が盛んで未分化な細胞ほど感受性が高く、分化して分裂しなくなった細胞ほど抵抗性です。
d.細胞周期S期 > 細胞周期M期:誤り。細胞周期の中ではG2/M期が最も感受性が高く、S期後半が最も抵抗性です(G1期は中間)。S期後半は相同組換え修復が働けるため抵抗性になると説明されています。
e.酸素分圧が高い組織 > 酸素分圧が低い組織:正しい(正答)。酸素効果により、酸素分圧が高いほど放射線感受性が高く、低酸素組織は抵抗性です。
覚えるポイント
放射線感受性が高い:分裂が盛ん・未分化・G2/M期・高酸素分圧。低い:分化・非分裂(神経)・S期後半・低酸素。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- IAEA: Radiation Biology: A Handbook for Teachers and Students (Training Course Series 42, 2010)
- Ostoich PV, et al. The Significance of the Response: Beyond the Mechanics of DNA Damage and Repair—Physiological, Genetic, and Systemic Aspects of Radiosensitivity in Higher Organisms. Int J Mol Sci 2024(Europe PMC)
- Na KJ. Commentary: Revisiting the Radiation Dose in Neoadjuvant Therapy for Esophageal Cancer: Insights from a High-Dose Strategy. J Chest Surg 2025(Europe PMC)
- Milsom I, Friberg LG. Primary adenocarcinoma of the uterine cervix. A clinical study. Cancer 1983(Europe PMC 抄録)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。