副鼻腔根治術後の術後性上顎囊胞|第106回医師国家試験A48

第106回医師国家試験 A48(2012年)

正答:e

問題

66 歳の女性。1 か月前からの頰部腫脹を主訴に来院した。28 年前に慢性副鼻腔炎に対する手術の既往がある。歯肉部からの穿刺で粘稠な液体が吸引される。頭部単純 CT 冠状断像(別冊 No. 22A)と頭部 MRI の T1 強調冠状断像(別冊 No. 22B)とを別に示す。

診断として最も考えられるのはどれか。

a.上顎洞癌

b.歯性上顎洞炎

c.副鼻腔真菌症

d.慢性副鼻腔炎

e.術後性上顎囊胞

頭部単純CT冠状断像。一側の上顎部に境界明瞭な膨張性の低吸収病変がみられる
別冊No.22A / 出典:厚生労働省・第106回A別冊(原本の該当ページ)
頭部MRI T1強調冠状断像。CTと同じ一側の上顎部に境界明瞭な高信号の囊胞性病変がみられる
別冊No.22B / 出典:厚生労働省・第106回A別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

28年前の慢性副鼻腔炎の手術(上顎洞根本術と考えられる)の後、長い年月を経て頰部腫脹が出現し、歯肉部からの穿刺で粘稠な液体が吸引されています。CTでは一側の上顎部に境界明瞭な膨張性の低吸収病変があり、MRI T1強調像では蛋白濃度の高い内容液を反映して高信号を示します。上顎洞手術や外傷の数年〜数十年後に生じる術後性上顎囊胞の典型像で、Caldwell-Luc手術が広く行われた日本で多くみられます。

画像の見方

CTで一側(画像の向かって左側。冠状断の通常の表示法なら患者の右側だが、原本に左右表示はない)の上顎部に境界明瞭な膨張性の軟部濃度病変を認め、MRI T1強調像では同部が高信号の囊胞性病変として描出される。

各選択肢の検討

a.誤り。上顎洞癌などの悪性腫瘍ではCTでの骨破壊が重要な所見で、充実性の腫瘤を形成します。手術既往部に生じた、粘稠な液体が吸引される境界明瞭な膨張性の囊胞性病変とは合いません。

b.誤り。歯性上顎洞炎は上顎歯の根尖病巣の感染が上顎洞に波及する副鼻腔炎で、洞内の炎症・分泌物貯留を示しますが、手術の遠隔期に生じる境界明瞭な囊胞ではありません。

c.誤り。上顎洞の真菌症(真菌塊)はCTで洞内の高吸収域(石灰化)を伴う陰影が最も特徴的で、本例のような手術後の囊胞性病変ではありません。

d.誤り。慢性副鼻腔炎は洞粘膜の肥厚と分泌物貯留が主体で、手術から長期間後に頰部を膨隆させる限局性の囊胞とは異なります。

e.正しい。上顎洞手術の遠隔期に発生する呼吸上皮で裏打ちされた囊胞で、頰部腫脹、粘稠な内容液、CTで膨張性の囊胞、T1強調像での高信号が典型的です。

覚えるポイント

上顎洞根本術の数十年後に頰部腫脹と粘稠な穿刺液をみたら術後性上顎囊胞を考える。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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