急性冠症候群の超急性期T波|第106回医師国家試験A31

第106回医師国家試験 A31(2012年)

正答:c

問題

78歳の男性。3時間前から持続する胸痛と冷汗とを主訴に来院した。1か月前に受けた健康診断では心電図の異常を指摘されなかった。10年前から脂質異常症を指摘されている。喫煙は20本/日を50年間。脈拍88/分、整。血圧162/98 mmHg。来院時の心電図(別冊No. 9)を別に示す。

診断として最も考えられるのはどれか。

a.急性心膜炎

b.肥大型心筋症

c.急性冠症候群

d.高血圧緊急症

e.大動脈弁狭窄症

来院時の12誘導心電図。V2〜V4で幅が広く高いT波を認める
別冊No. 9 / 出典:厚生労働省・第106回A別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

脂質異常症と長期の重喫煙という冠危険因子をもつ高齢男性が、3時間持続する胸痛と冷汗で受診しています。1か月前には正常だった心電図で、V2〜V4を中心に幅広く尖鋭化した高いT波(超急性期T波)とわずかなST上昇がみられ、異常Q波はまだありません。発症早期の急性冠症候群(前壁の急性心筋梗塞の超急性期)と考え、経時的な心電図と心筋トロポニン測定、緊急冠動脈造影の準備を進めます。

画像の見方

洞調律。V2〜V4を中心に(V5・V6にも)QRSに続く幅の広い高いT波があり、STはわずかに上昇している。異常Q波は認めない。aVRのT波は陰性で、四肢誘導に明らかなST上昇はない。

各選択肢の検討

a.誤り。急性心膜炎では多くの誘導にわたる上に凹のST上昇とPR低下がみられ、胸痛は呼吸や体動で増強し前かがみの座位で軽くなります。本例は前胸部誘導中心の高いT波で、冠危険因子をもつ持続胸痛です。

b.誤り。肥大型心筋症では左室肥大の所見と深い陰性T波・ST低下、異常Q波などが慢性的にみられ、1か月前の心電図が正常だったことや急性の持続胸痛に合いません。

c.正しい。冠危険因子のある患者の持続する胸痛・冷汗と、新たに出現した前胸部誘導の超急性期T波から急性冠症候群です。

d.誤り。高血圧緊急症は著しい高血圧(目安として収縮期180 mmHg以上や拡張期120 mmHg以上)に急性の臓器障害を伴う病態です。本例は162/98 mmHgで、胸痛と心電図変化は冠動脈の虚血で説明されます。

e.誤り。大動脈弁狭窄症では労作時の胸痛・失神と駆出性雑音、左室肥大の心電図が特徴で、安静時に急に始まった持続胸痛と新たなT波増高の説明になりません。

覚えるポイント

持続する胸痛+冷汗で、Q波が出る前のごく早期は「幅広く高いT波(超急性期T波)」が唯一の変化のことがある。経時的に心電図とトロポニンを追う。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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