第105回医師国家試験 I38(2011年)
正答:c
問題
45歳の女性。自転車で走行中に車と衝突し、直後から意識障害をきたしたため搬入された。入院時および翌日の頭部単純CTに異常を認めなかった。入院後3日で意識が回復し、上下肢には麻痺を認めず、歩行も正常であった。日常会話に支障はないが、食事後5分経つと食事をしたことを忘れている。自分では物覚えは正常だと思っている。行きたいところがあると、一人でどんどんその方向に歩いて行ってしまう。この患者が入院後3週で自宅に退院することとなった。
家族への説明で適切でないのはどれか。
a.口論しやすい。
b.浪費しやすい。
c.転倒しやすい。
d.戸締りを忘れやすい。
e.火を消し忘れやすい。
正答の理由
受傷後に新しい出来事を保持できず、自己の障害への気づきも乏しく、目的地へ衝動的に歩いていくことから、外傷後の記憶・遂行機能障害が考えられる。家族には感情・衝動制御、金銭管理、戸締りや火の始末への注意を伝える。一方、提示された状態では麻痺も歩行障害もなく、転倒しやすいとの説明が最も適切でない。
各選択肢の検討
a.口論しやすい。 前頭葉系の行動・感情調節障害により易怒性がみられうる。
b.浪費しやすい。 遂行機能や衝動制御の障害で金銭管理が難しくなることがある。
c.転倒しやすい。 正しい。設問では麻痺・歩行障害がなく、挙げられた記憶・遂行機能障害から転倒しやすいと特に説明する根拠はない。
d.戸締りを忘れやすい。 記憶障害で日常生活上の手順や戸締りを忘れうる。
e.火を消し忘れやすい。 記憶・遂行機能障害により火の始末を忘れる危険があり、見守りや環境調整が必要となる。
覚えるポイント
認知・遂行機能障害と退院後の安全
出典・参考資料
- 厚生労働省:第105回医師国家試験問題および正答
- 主要症状、外傷性脳損傷後のMRI所見及び高次脳機能障害とICD-10の解説(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 障害福祉サービス等事業者向け 高次脳機能障害支援マニュアル
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。