第104回医師国家試験 I77(2010年)
正答:a・b
問題
22歳の女性。未経妊。無月経と挙児希望とを主訴に来院した。クロミフェンでは排卵が起こらず、ゴナドトロピン療法を行った。両側卵巣が径15 cmに腫大し、胸水と大量の腹水との貯留を認める。一日尿量は300 ml。血液所見:赤血球500万、Hb 16.5 g/dl、Ht 55 %、白血球19,000。血液生化学所見:LH 35.8 mIU/ml(基準1.8〜7.6)、FSH 10.5 mIU/ml(基準5.2〜14.4)。
治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
a.輸液
b.ドパミン投与
c.高浸透圧利尿薬投与
d.副腎皮質ステロイド投与
e.ヒト絨毛性ゴナドトロピン投与
正答の理由
ゴナドトロピン療法後の卵巣腫大、胸腹水、Ht 55 %の血液濃縮と乏尿から重症の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。血管透過性の亢進で血漿成分が血管外に漏れ、血管内脱水に陥っています。治療の要点は血液濃縮の補正と尿量の確保で、輸液と腎血流を増やす低用量ドパミンを用います。厚生労働省の対応マニュアルは2011年版、2021年改定版ともこの輸液と尿量確保の手順を示しています。
各選択肢の検討
a.輸液。正しい。細胞外液補充液を点滴し、改善が不十分なら膠質製剤やアルブミンを追加して血管内容量を回復させます。
b.ドパミン投与。正しい。上記マニュアルは尿量30 mL/時以上の確保を目標に、腎血流を増やす塩酸ドパミン1〜5 μg/kg/分の静注を挙げています。
c.高浸透圧利尿薬投与。誤り。乏尿の原因は血管内脱水です。利尿薬は十分な血漿膠質浸透圧が確保されない限り用いないのが原則で、血液濃縮と血栓の危険を強めかねません。
d.副腎皮質ステロイド投与。誤り。OHSSの治療の原則は循環血液量の確保と尿量維持、血液濃縮の防止です。確認したマニュアル(2011年版、2021年改定版)の治療手順にステロイド投与は挙げられていません。
e.ヒト絨毛性ゴナドトロピン投与。誤り。hCGはOHSSの発症を促す要因で、投与後に起こりやすく、hCGの増量や反復もリスク因子です。重症化している時に投与するのは逆効果です。
覚えるポイント
重症OHSSは血管内脱水が本態で、輸液と低用量ドパミンで尿量を確保し、利尿薬とhCGは避ける。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- 重篤副作用疾患別対応マニュアル 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)(平成23年3月、厚生労働省)
- 重篤副作用疾患別対応マニュアル 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)(平成23年3月、令和3年4月改定、厚生労働省)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。