左中大脳動脈閉塞による脳塞栓症|第104回医師国家試験I40

第104回医師国家試験 I40(2010年)

正答:a

問題

61歳の男性。意識障害のため搬入された。買い物中に右手に力が入らなくなり、言葉も出なくなった。そのまま倒れて意識を失ったため、店員が救急車を要請した。意識はもうろうとし、時に開眼し左手足を自発的に動かす。右上下肢は全く動かさず、言葉は出ない。脈拍72/分、不整。血圧170/90 mmHg。血液検査で異常を認めない。発症から2時間後の頭部MRIの拡散強調像(別冊No. 2A)とMRA(別冊No. 2B)とを別に示す。

診断はどれか。

a.脳塞栓症

b.ラクナ梗塞

c.もやもや病

d.脳動脈瘤破裂

e.高血圧性脳出血

別冊No.2A 頭部MRI拡散強調像の横断像。左シルビウス裂周囲の島回に強い高信号があり、その後外側の皮質にも高信号域がある。右シルビウス裂周囲には左より明らかに弱い線状の高信号様の部分がある。
別冊No.2A / 出典:厚生労働省・第104回I別冊(原本の該当ページ)
別冊No.2B 頭部MRA。右中大脳動脈は分枝まで描出されるが、左中大脳動脈は水平部の途中で途絶している。
別冊No.2B / 出典:厚生労働省・第104回I別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

活動中の突然の発症、右片麻痺と失語に、左中大脳動脈の急性閉塞と同領域の皮質を含む拡散強調像高信号が揃うので、脳塞栓症と診断します。脈拍の不整からは心房細動による心原性塞栓が推定されますが、問題文に心電図の記載はなく、心房細動も塞栓源も本例では確定していません。

画像の見方

本解説の読影です。拡散強調像では左シルビウス裂周囲の島回に強い高信号があり、その後外側の側頭〜頭頂葉の皮質にも高信号が広がります。発症2時間で急性虚血を示す所見です。右シルビウス裂周囲にも左より明らかに弱い線状の高信号様の部分がありますが、この1断面だけでは急性病変と判断できず、診断の根拠にはしていません。MRAでは左中大脳動脈が水平部の途中で途絶し、その先の主要な分枝は右のようには描出されません。右中大脳動脈は分枝まで描出され、両側の内頚動脈終末部も描出されています。病変は左中大脳動脈領域の皮質を含み、穿通枝の小梗塞の形ではありません。

各選択肢の検討

a.脳塞栓症。正しい。塞栓が主幹動脈を突然閉塞させる病態で、発症の突然さ、MRAの途絶、皮質を含む梗塞が合致します。塞栓源として代表的なのは心房細動で、本例の脈不整はこれを示唆しますが、確定には心電図などの検索が必要です。

b.ラクナ梗塞。誤り。深部の細い穿通枝の閉塞で小梗塞を生じ、純運動性片麻痺などの症候を示します。失語や意識障害を伴う皮質を含む広範な病変、主幹動脈の途絶とは合いません。

c.もやもや病。誤り。内頚動脈終末部が細くなり、脳底部にもやもや血管が発達する疾患です。本例のMRAは両側内頚動脈末端の狭窄ともやもや血管ではなく、片側中大脳動脈の途絶です。

d.脳動脈瘤破裂。誤り。くも膜下出血として突然の激しい頭痛と意識障害を起こします。本例は頭痛の記載がなく、拡散強調像の皮質の虚血所見とMRAの主幹動脈閉塞で説明されます。

e.高血圧性脳出血。誤り。血圧170/90 mmHgと局所症状は矛盾しませんが、示された画像はMRAの閉塞と拡散強調像の虚血の所見で、これが診断を決めます。

覚えるポイント

突然発症・主幹動脈途絶・皮質を含むDWI高信号は脳塞栓症。脈不整があれば心房細動を推定し、心電図で確かめる。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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