在宅酸素療法中のSpO2低下への電話対応|第104回医師国家試験H29

第104回医師国家試験 H29(2010年)

正答:c

問題

72歳の男性。肺結核による胸郭成形術を行い、長年にわたり在宅酸素療法を行っている。通常の酸素投与量は0.25l/分である。担当医の指示どおり、パルスオキシメーターを購入し、労作時や労作後の酸素飽和度を自己測定し、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉が90%以下に低下したときは、90%以上に戻るまで酸素吸入量を一時的に調節する自己管理を行っていた。本日夕方から、SpO2が80%近くに低下したので酸素吸入量を0.5l/分に増やし1時間様子を見ていたが、SpO2は90%を超えなかった。呼吸困難の程度は普段と変わりはなかった。

電話で相談を受けた当直医の指示で正しいのはどれか。

a.「苦しくなければ心配ありません」

b.「絶対安静にして様子を見て下さい」

c.「すぐに来院するようにして下さい」

d.「次回の予約日に外来を受診して下さい」

e.「酸素吸入量を4l/分へ上げて吸って下さい」

正答の理由

自己管理の範囲で酸素を倍量にしても1時間SpO2が回復せず、普段の安定状態からの明らかな悪化です。安定していた慢性低酸素血症の患者でSpO2が低下し酸素需要が増えたときは、血液ガスを含む評価が必要で、急性の病態の最初の徴候である場合があります。胸郭変形は高二酸化炭素血症のリスク因子でもあり、すぐに来院させて原因を調べます。根拠にした英国胸部学会の指針は入院・救急での酸素療法の指針で、胸郭成形術や在宅酸素の電話指示を名指ししたものではないため、考え方を本例に当てはめています。

各選択肢の検討

a.誤り。呼吸困難の自覚だけで悪化を否定できません。SpO2の低下自体が評価の適応で、低酸素血症や高二酸化炭素血症は錯乱や興奮として現れることもあります。

b.誤り。安静で様子を見ると原因の評価が遅れます。自己調節で戻らない段階を過ぎており、自宅で待つ理由がありません。

c.正しい。酸素の増量後も回復しない低下は、感染や増悪など急性の原因の評価と血液ガス測定が必要です。

d.誤り。緊急度の判断が逆です。予約日まで待つと呼吸不全の進行を見逃します。

e.誤り。胸郭変形のある患者は高二酸化炭素性呼吸不全の危険があり、目標SpO2は通常88〜92%で管理します。通常量の16倍もの酸素を血液ガスなしに指示すると、呼吸性アシドーシスを招くおそれがあります。

覚えるポイント

在宅酸素中のSpO2低下が指示内の増量で戻らなければ受診。胸郭成形後は高濃度酸素によるCO2貯留に注意する。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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