第104回医師国家試験 H24(2010年)
正答:e
問題
22歳の男性。自宅に引きこもっていることを心配した両親に伴われて来院した。大学在学中の21歳時に、「監視されている」と被害的になり幻聴に従った行動をとるようになったため6か月入院した。退院後、医療機関を受診しないで半年自宅に引きこもっている。大学は休学している。身長173cm、体重68kg。会話は成立するが、感情の抑揚に乏しく意欲発動性に欠ける。神経学的所見、血液所見、血液生化学所見、脳波および頭部単純CTに異常を認めない。
心理・社会的接近として適切でないのはどれか。
a.デイケアに導入する。
b.生活技能訓練を通じて社会復帰を図る。
c.精神疾患の心理教育プログラムに患者を参加させる。
d.精神疾患の心理教育プログラムに家族を参加させる。
e.大学への復学のために知的障害者更生施設を利用する。
正答の理由
被害妄想と幻聴の既往に感情の平板化と意欲低下が残っており、統合失調症の陰性症状が前景に立つ段階です。リハビリテーションと地域支援、本人の自己管理の学習、家族への教育が治療の柱になります。知的障害者更生施設は、もとの知的障害者福祉法(第21条の6)で18歳以上の知的障害者を入所させて保護と更生の指導訓練を行うと定められた施設です。出題当時は障害者自立支援法の経過措置で従前の運営が認められていた移行期ですが、知的障害のない本例の復学支援の場でないことは変わりません。なお、未受診の状態なので心理・社会的接近と並行して薬物療法の再開も検討します。
各選択肢の検討
a.適切。地域での通所は、引きこもりで失われた生活リズムと対人交流を取り戻す場になります。地域支援サービスは統合失調症治療の主要な要素です。
b.適切。技能訓練は仕事、買い物、自己管理、他者との付き合い方の回復を助けます。陰性症状で社会機能が落ちた本例に合います。
c.適切。長期に再発しやすい病気なので、本人が病気を理解して自己管理の技能を身につけることが大きな目標です。
d.適切。若い患者の親に病気の情報を伝える心理教育は再発率を下げます。本例は両親に伴われて受診しています。
e.適切でない(正答)。入所の対象と目的が知的障害者の保護と指導訓練であり、大学復学を目指す統合失調症の患者には合いません。復学の支援は精神科の通所や地域支援の枠組みで考えます。
覚えるポイント
統合失調症の回復期はデイケア、生活技能訓練、本人と家族の心理教育。施設は対象となる障害で選ぶ。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- Schizophrenia – MSD Manual Professional Edition
- 知的障害者施設訓練等支援事業(中条町・黒川村 合併協議資料)
- 知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号、e-Gov、平成19年改正時点の写し、Internet Archive)
- 障害者自立支援法(平成17年法律第123号、e-Gov、平成23年改正時点の写し、Internet Archive)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。